満足度★★★★★
鑑賞日2020/03/11 (水) 13:00
座席1階
日本は先の戦争で、庶民の音楽にまで「敵性言語」を排除し、「非国民だ、銃後の守りとしてふさわしくない」などと摘発した。この物語は、どんな暗い時代にも流行歌を楽しむ庶民がいたことを、風刺の効いた舞台で表現した名作だ。
2幕もので休憩を挟んで3時間を超えるが、笑いあり涙ありで十分に楽しめる。オデオン座という横文字の店名のレコード店の娘が、バリバリの帝国陸軍傷痍軍人と結婚する、という設定だ。
市川春代の「青空」。この曲は、他劇団もキーポイントとなる設定・背景で使ったりして、流行した当時を知らない私なのだが、すっかりおなじみになってしまった。
パンフレットやチラシの図柄にも使われている防毒マスクの冒頭、ラストの演出がいい。防毒マスクで何を防ぐのか。焼夷弾の火や煙だけでなく、これまであった文化との隔絶を意味している、のだろう。舞台自体はとても楽しくて一緒に歌いたくなるような感じなのだが、この冒頭とラストに井上ひさしの鋭いメッセージが込められている。
新型コロナの関係で上演期間が短くなったこの舞台。終了後はスタンディングオベーションも起きた。「青空」のメロディーで、今が新たな「戦前」にならないようにと歌いたい。