満足度★★★★
■『あなたの目下には水が広がるとして』鑑賞/約65分■
若い三橋さんのオリジナル脚本で、あるアパートの一室の退去者と入居者が手違いにより鉢合わせする、日常あってもおかしくない、とはいえなかなかありえないシチュエーションを描く。フライヤーでは「現代口語演劇」であることが強く謳われていたが、それとはまた別路線という印象。現代口語演劇にしてはリアリズムへのこだわりが弱く、代わりに、理に適わないことがしばしば起きる。そして、若干の薄気味悪さとどこかトボけた空気が劇全体を覆っている。こういう“ゆるふわ不条理劇”みたいな作風は、師匠の平田オリザにはない、三橋さんならではのもの。三橋さんには、現代口語演劇というものにとらわれすぎることなく、独自の道を歩んでほしいと思ったし、また、私がこんなことを言うまでもなく、独自の道を進むだろう。現代口語演劇の正道を歩みたくても歩みきれず、どうしたって横道へと、邪道へと逸れてしまうのは三橋さんの個性なのだと肯定的にとらえるべき。