弾丸黒子 公演情報 劇団芝居屋かいとうらんま「弾丸黒子」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    人物が描けていないと社会性あるテーマも観えてこない。この公演を観て社会性云々というよりは、人の見方によってその事柄が違って見える ということ。その立ち位置が突拍子もなく、それ故に自由発想の間口が広い。また現代的と言うか、インターネットの普及で自分1人で情報収集ができ、他者との関わりの稀薄さをさり気なく指摘する。これってタイトル「弾丸黒子」を表しているような、いないような。
    (上演時間1時間20分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、木製のテーブルと椅子のみ。それを縦や横に配置することで状況や情景を変化させる。もっとも人と(死)人との会話が中心であるから、細かな設定は不要かもしれない。むしろ、状況・情景描写よりは、そこから観える自分自身の考えや行動、過去に起きた又は起こした事件を客観的に眺めるような展開。

    物語は、殺し屋・松木が人違いだと懇願する兵藤優一を射殺するところから始まる。直ぐに兵藤が生き返り、後頭部を撃たれた痕跡を見せながら話し掛ける奇想な展開へ。生者と死者が会話する、そして第三の死者も登場し話し掛けてくる。死者は松木が殺してきた亡者たちで、恨み辛みを言い出す。松木も既に死人かと思ったが、そこは判然としない。ただ松木も殺害されることから、表層的に観れば因果は巡るといった結末。それは兵藤にも当てはまり、何故死ななければならなかったのか、疑問が解ける。

    さて、自分の考えや行動(範囲)はたかが知れている。生きている限りは見栄や外聞もあり、それを隠したり維持するために、時として”嘘”をついたりする。一方、死者は嘘をつく必要がないと、劇中でサラッと言う。死=不幸ではなく、見方によっては自由(解放)度が広がるかもしれない。生きていれば裏表の顔の使い分け、思考の狭さくが付きまとうが、身体的には何も(行動)出来ない。そのアイロニーが透けて観えてくる。

    この物語を支えているのが舞台技術の音響_ピアノの連弾や雑音BGMなど。そして役者の演技。特に松木(贈人サン)と兵藤(ごとうたくやサン)の2人。松木の殺し屋らしい荒い声や怒声、一方、兵藤の死人らしい達観した淡々とした口調。その対比が徐々に同調していくようだ。始めのうちは、何を聞かれても互いが知らない、という拒絶に近い質疑応答であったが、いつの間にか感情豊かに変化していく。実に見事な展開である。そして、ラスト、松木が死んでいく様をスポットライトで照らすが、しばらく瞬きせず、虚空を見つめる姿は印象的だ。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2020/02/24 13:07

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