八つ墓村【公演中止(02/28(金) ~ 03/03 (火) )】 公演情報 松竹「八つ墓村【公演中止(02/28(金) ~ 03/03 (火) )】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    単なるおどろおどろしい伝説や「祟り」、あるいは家族内の愛憎を描くだけではない。現代に通じる「八つ墓村」の意味を新たに掘り起こした舞台だった。これまでの数多くの映像化とは、深みが違っていた。「30人殺し」という「稀代の大犯罪者を出したにもかかわらず、田治見家は、追放もされず、二十六年前と変わることなくこの村に君臨し」ているのはなぜか、と脚本・演出の齋藤雅文はいう。それを「八つ墓村」の最大の謎として、その答えを探ったのが今度の舞台だという。

    カネや権威に弱い民衆の事大主義、個人の責任を曖昧にする誤った集団主義。そうした日本のムラ社会の歪みが、連続殺人事件の謎解きとない合わされて浮かび上がってくる終盤は感動的だった。それは「桜を見る会」疑惑を持ち出すまでもなく、現代日本への批判そのものだった。

    あと特筆すべきは、舞台美術。山村の風景、古いお屋敷、地下の迷路のような鍾乳洞など、舞台化は難しいと思われていた情景を、見事に舞台に現出させた。しっかり作品世界に浸らせてくれた。現代演劇は「何もない空間」に近い簡素なセットが多いけれど、やはりしっかりした美術は作品を支える。商業演劇ならではの贅沢な舞台だった。転換も早く、全体にテンポも快速だった。

    贅沢といえば、舞台に出る俳優だけで30人、生演奏、装置、証明・音響などのスタッフも入れれば五十人をこすだろう。そうした大人数の力を結集させたことも見ごたえの大きな要素だった。

    二十六年前の三十人斬りの回想シーンは、能・歌舞伎の様式美、お囃子をとりいれての演出だった。犯人・要蔵の狂気が村人たちを絡め取っていくさまが、ありありとして、素晴らしいシーンだった。映画などはまさに血みどろに凄惨に描くところだが、舞台ではあくまで恐怖も美的に、シンボリックに。要蔵の背後に、さらに大きな「修羅」が控えてこの世ならぬ雰囲気を作っていた。

    喜多村緑郎、河合雪之丞が熱演。水谷八重子・波乃久里子の新派の大御所が、しっかり舞台をしめていた。旧家の人柱となっていくしっかりものを演じた一色采子も丹精な佇まいに強さと脆さを秘めていてよかった。

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    2020/02/23 08:54

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