野兎たち【英国公演中止】 公演情報 (公財)可児市文化芸術振興財団「野兎たち【英国公演中止】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    早紀子がイギリス人の婚約者とその母といっしょに、10年ぶり(数日の帰国を含めれば4年ぶり)に可児の実家に帰ってくる。結婚の報告のためである。実は早紀子はイギリスで失業したために、ビザ更新のための結婚という要素が強い。ふたりが愛し合っていることは事実だが、同棲でもなんの問題もなく、わざわざ結婚するのは別、というのが昨今のイギリスのようだ。

    早紀子は、出来のいい兄と比べられて、両親に邪魔者にされ、いつも干渉されてきたと思っている。前半は早紀子の、親が今回も結婚に介入し、自分を支配しようとしているという「思い込み」が目立つ。良心の些細な言葉尻を、悪く悪くうけとめて、いら立ちを募らせていくのである。早紀子役のスーザン・もも子・ヒングリーがいい。日英両語を操りながら、女性らしい不器用な苛立ちを好演していた。恋人役のサイモン・ダーウェンの受けの演技も自然でよかった。
    母親役の七瀬なつみも、客を迎えて上品にふるまう母親を好演していた。

    ネタバレBOX

    ところが、後半は一転。弁護士の兄の、同僚が突然庭からやってきて、何かが兄に起きていた事がわかる。老親は実は兄の失踪で手いっぱいで、早紀子に干渉するゆとりはなかったのである。ここからは、早紀子が兄嫁に会いに行くなどして、ただ失踪を隠してやり過ごそうとしている親に代わって、家の問題を解決しようと躍起になる。

    そして、最後は早紀子が家族のために日本に残る決断をする。ビザが切れて、再びの長期滞在は難しくなるにもかかわらずである。恋人の親子を見送り、家族4人でちゃぶ台を囲む。そこに、玄関の呼び鈴がなる。何かが起きる気配を残して幕を閉じる。

    イギリス人演出家の言葉によれば、「失踪」という日本特有の現象を取り上げたということだが、本当に日本独特なのだろうか。イギリスやフランスではあまりないというのは信じられない。また先日、70年代に「蒸発」が日本で社会問題になったという話を見たけれど、今はあまりニュースでは聞かない。70年代は安部公房が「蒸発」を題材に小説を書いたくらいだった。今あまり聞かないのは、失踪が減ったからなのか、珍しくなくなったからなのか。日本の「失踪」が、他国と比べてどうなのか。50年前と今とでどうなのか。そっちの方が気にかかる。

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    2020/02/12 09:06

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