野兎たち【英国公演中止】 公演情報 (公財)可児市文化芸術振興財団「野兎たち【英国公演中止】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    国を超えた共同制作というのはなかなかむつかしい。演劇は特に。
    これが、日本人が海外へ行った話、とか逆に外国人が日本で経験するドラマとなると結構面白く仕上がった作品があるのに、共同制作となると、議論も随分尽くしているはずなのにぎごちない。きっと、共同で取り組むと素材の選択から難しいのだろうと思う。その結果、まぁまぁの素材が選ばれ、一つの舞台にするために、作者も演出も演じる俳優も妥協を重ね、結果はどちらの国の上演も、やってみただけで終わってしまう。
    今回はまず脚本。日英の男女が結婚することになって、名古屋に近い地方都市の女性の実家に夫となる英国人とその母がやってくる。結婚をめぐるそれぞれの両親との葛藤、結婚式への考え方の違いなど、よくある話から入るが、途中から妻になる日本人女性の兄の失踪の話になり、母を連れて日本にやってきた夫となる英国人と母親は置いてきぼりになってしまう。バランスの悪い本で、いかにもの風俗は色々見せられるが、どこが焦点だかわからない。テレビの連ドラによくある「身の上相談ドラマ」ならこれでいいのだが、演劇は、これではもたない。テレビは顔なじみのスターが出て、わかったような気分になるが、必ずしも実績の多いとは言えない日英の俳優では、本の不備を割引しても苦しい。客も正直で、ようやく半分しか入っていない。
    家族劇というが、両国の家族の一面を素材に、それぞれのお国ぶりがある、というだけに終わってしまった。昨年は帰郷ものの家族劇としては秀逸な「たかが世界の終わり」が二つのカンパニーで上演されたが、いずれもが消化しきれていなかった。身近な素材だけに茶の間で見るだけのテレビと違って、肉体をさらす演劇では難しいのだ。
    リーズの劇団の日本人女優(スーザン・ヒングリー)は、この物語のホンモノの経験者らしく、英国でたくましく生きていく日本人を生々しく演じている。新しいタイプの日本人ともいえるが、それを浮き彫りにするには、周囲がまるで追いついていない。
    公共劇場の国際共同制作(日本側は可児市の劇場。英国側はイングランドの地方都市リーズの劇場)は劇場の一つの旗になるし、やって見れば、関係者にはいい経験になるから無駄ということはないが、こういう形の仲良し共同制作はどこか修学旅行を思わせて、むなしい。典型的な「ことなかれ共同制作」の、残念ながら同じ轍を踏むことになってしまった。


    ネタバレBOX

    1.タイトルは英タイトルを約したものでもないし何のことかわからない。
    2.この劇場の票券はどうなっているのか。売れていない空席がばらばらにあるのはやむを得ないところではあるが、金を払った客の前の売れていない大きな空席に、開演まじかに明らかに劇場関係者がどやどやと来るのは劇場の常識を完全に逸脱した官僚劇場根性丸出しの無神経さだ。勉強だから見るなとは言わない、客の後ろで見よ。ほんとに新国立は、困ったものだ。つくづく税金の無駄を感じる。

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    2020/02/11 00:28

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