満足度★★★★★
鑑賞日2020/02/02 (日)
東京芸術劇場にて俳優・佐藤隆太さんの一人芝居『エブリ・ブリリアント・シング』を観劇。
これまでの「演劇」という概念を覆す非常に斬新な手法を用いた作品。メインとなるステージを劇場の中央に持ってきてその四方を観客が固めるという配置は何度か観たことがありますが、東京芸術劇場では初めて観ました。普段ステージがある位置に客席があってとても不思議な感覚。この配置だけでも斬新でしたが、この作品の凄いところは観客参加型、そしてその参加方法かと思います。開演前から会場に佐藤隆太さんが登場し、観客とコミュニケーションを取りながら小さなカードを配布している光景は何とも異様な雰囲気であり、一体何が始まるのか、どんな作品なのか、幕が上がる前からとても興味深く、独特の高揚感がありました。そして実際に幕が上がったらもう完全にブリリアントな世界。佐藤隆太さんが持つ優しく温かな雰囲気と相まって、終始ワクワクが止まらない今まで味わったことがないような興奮がありました。
元々は2013年のイギリスが発祥で、翌年から世界中で上演されている人気作品の日本初公演。人間生きていれば苦難にぶち当たることは多々ありますが、決してそれだけではなく、大きかれ小さかれ素敵なモノや体験もあります。この作品はそんな素敵なこと、ものを探し続けているある男性の物語です。海外戯曲の翻訳版ということもあり、やや日本離れした価値観や印象を受ける部分はあるものの、ベースとなる物語のストーリーはとても魅力的なお話で、観ていて活力が湧いてくるような感覚がありました。また、観客にフレーズを読んでもらったり役に成り切ってもらったりする独特な作品なので、まさに1回1回の重みがあるというか、まさにその回だけの限定感があるお芝居だと感じました。だからこそ本当は全ての回を観たいというのが本音です。一人芝居だけど会場全体で作り上げているお芝居。全然知らない人達の集まりでもこれほどまでに妙な一体感が生まれたのは不思議だなと感じました。観客の立場であってもカードを受け取ったら誰もが主役になれるような作品。これは新感覚の演劇。面白かったです。佐藤隆太さんの演じ方、エンターテイメント性もさすがだなと感じました。