デッドストック・トーキョー 公演情報 キコ qui-co.「デッドストック・トーキョー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2020/01/25 (土) 19:30

    和服の着こなしも粋な和尚、じゃなくて噺家が狂言回しとして登場。
    4つのストーリーをつなぐキーワードは“記憶媒体くしび”。
    極めて現代的なそれは、意外な物質だった・・・。
    SFと江戸噺の融合という着眼点が新鮮。
    そこを貫く“記憶媒体”の生々しさが強烈な印象を残す。

    ネタバレBOX

    第一話「その夜の妻」
    夜野(森田陽祐)は車いすの妻(外村道子)と廃ビルで暮らしている。
    道子は、彼が密かに研究を重ねて創り出した違法なAIだった。
    だがまもなく、特定の製造年月日以前のヒューマノイドは
    寿命を終える日が来る。
    世間はアップデートに躍起になっている。
    そしてこの夫婦にもその日がやって来る。
    寿命を終えて動かなくなったのは・・・夫の夜野の方だった。
    夜野の意思は、道子の意思を反映したものに過ぎなかったのだ。

    人は「言って欲しい言葉を相手に望む」ことがある。
    望んだ言葉を言ってくれると幸せを感じる。
    だがAIにそれを言わせることは、本当の幸せなのか?
    動かなくなった夫の姿が衝撃的で、妻の孤独が深まる。

    第二話「デッドストック・スタージョン」
    姿かたちは十分大人だが、知性は15歳のクローンたち。
    新しく赴任して来た女性教師が、「クローンに教えることなど無い」と
    上司から言われながらも彼らと交流し、助けたいと奔走する。
    クローンたちの多くは作家の名前をコードネームとして名乗るが
    “お七”は、あの八百屋お七を思わせる設定だ。
    火事の避難所で出会った男に、もう一度会いたくて、
    江戸の町に放火し、火あぶりの刑に処せられた女。
    お七の生きざまにどうしようもなく惹かれるクローン。
    ラストで明かされる、彼らの身体がほとんど水でできており
    東京の水不足を補うためにストックされているという設定が秀逸。
    ちょっとカズオ・イシグロ的なところもあるが斬新な発想がとても魅力的だ。
    スタージョン(北川義彦)の15歳の若者らしい初々しさが良かった。

    第三話「東京物語」
    運び屋の原嶋(音野暁)は、「くしび」という怪しげな物を運ぶ依頼を受ける。
    依頼主のシングルマザーに惚れてしまった彼は次第に彼女と親しくなっていく。
    その依頼主チロの住む近隣では、連続殺人事件が起こっている。
    チロを取り巻く人々、元亭主・その新しい女・迷惑な姉など、
    チロにとって消えて欲しい人間は複数いる。
    そしてついに原嶋が、チロの正体に気付く日が来る。

    第四話「twilight valkyries」
    当日パンフにも“シークレット”とされていたが、
    八百屋お七(小口ふみか)が江戸の大火を引き起こす様を描く。
    二役からお七に替わっていくあたり、役者さんの力を感じた。
    ストーリーテラーの小栗剛さんもそうだが
    着物の着付けがきれいで、こなれた感じが良かった。

    「くしび」とは何か・・・?
    霊的な、不思議な物とされるようだが、人の血に乗って
    時代を流れ災いをもたらす、何かコントロールし難い狂気のようなものか?
    お七を狂わせ、チロを狂わせ、連綿と続いて行く不思議な力。
    どんなに科学が進んでも、解明し難いことが起こり、
    人はそれに翻弄され、時に人生を狂わされるという事か。








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