満足度★★★★
『だけど涙が出ちゃう』(工藤千夏作)を観劇。死刑制度がテーマの2本立ての一つ目。良い出来。出ずっぱりの三名が客演であった。家の主であるマサミ(山藤貴子)が居間の座卓に腕を付いて待つ。そこへ現れる神原(各務立基)と、お目当て天明留理子(神原の手の手錠に結ばれた縄を握った刑務官役)。二人の登場から会話が始まり「状況」が徐々に氷解し見えて来る。死刑に関する新たな制度に揺れる架空の物語にリアリティを与える畑澤聖悟の父(妻を死なされた遺族)、その娘(三津谷友香)。計5名の芝居。
今の現実と少しズレた架空の現実を、段ボール箱を使った山下昇平の美術、中島氏の照明が支えている。
死刑制度論議の優れた素材と感じた所以は、これも議論のある尊厳死に纏わる事件を扱った事、そして被害者(遺族)感情の絶妙な所を提示できた事(畑澤の演技も大きな要素)。