イヨネスコ『授業』 公演情報 楽園王「イヨネスコ『授業』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    未見の不条理劇…自分にとってこの公演が今後の同作品の基準になる。たぶん、本公演は文章でいう倒置法のような描き方になっているのではないか。つまり結論が先になり、その説明を順々に展開していく。そうすることで難解と思われそうな公演を解り易くする演出的な工夫である。確かにその面は良かったが、逆に不気味に逆転していく立場と言った不条理の醍醐味が弱くなったように思えたのが残念だ。
    (上演時間1時間20分)【Aチーム】

    ネタバレBOX

    舞台は一方向(2段)からの観劇。上手・下手側の中間に白線が引かれ、基本的に左右対称の配置。長テーブルを挟んで椅子2脚。壁には額縁と時計が掛けられている。そして部屋番号のような表示があったが、女中マリー(小林奈保子サン)の台詞から犠牲になった生徒の人数のようだ。
    冒頭は、上手側に生徒1(杉村誠子サン)が手錠をしたまま うつ伏せに倒れているところから始まる。犯人は個人授業を受け持っていた教授(岩澤繭サン)が激怒して刺殺した。

    本来「授業」の登場人物は教授と女子学生、そして女中の3人らしい(正確には解らない)。しかし本公演では生徒1・2と2人登場させ、物語に幅(1人の生徒に算数と言語学の授業をするところを生徒2人の場面に分割)を持たせ不条理を際立たせようと試みているようだ。そして教授は血気盛んな女性教師と設定している。そこに同性同士、年齢的に近い教える側と教わる側の微妙な立場を確立する。

    下手側スペース、生徒2(日野あかりサン)は手錠をしたまま、言語学的な講義を受けている。分かったような分からないような珍妙な台詞が威圧的に述べられ困惑している。生徒は教授の狂騒的な饒舌に辟易し歯痛?を訴え始める。
    次に上手側スペース、生徒1は博士号の試験に合格するため、教授の個人指導を受けている。授業は初歩の算数から始まり、生徒1は教授の出す足し算の問題には正答するが、引き算になるとその概念を理解していない。だんだん教授はイラつき女子学生に対して威圧的になる。教授・生徒「支配・被支配」の立場が際立ち、教授は生徒に対して攻撃的になり、生徒は意気消沈していく。こちらも歯痛を訴える。

    生徒の出来の悪さに逆上した教授は、生徒をナイフで刺し殺す。教授は打ちひしがれた様子だが、女中はもうんざりと言った雰囲気。なぜなら、この日、40人目の犠牲者だからだ。この生徒1がうつ伏せになっていた冒頭シーンへ回帰(実際は別の犠牲者。38人目と40人目)させているかのようだが…。本来の「授業」は教授と生徒の態度というか精神的立場が逆で、それが授業を通じて徐々に支配・被支配へ逆転していく展開、その不条理の構図が観えてくると…。本公演は冒頭から(女)教授の狂騒が描かれ、場景の変化という見せ場が弱かったという印象で勿体なく思う。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2020/01/21 22:44

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