アルトゥロ・ウイの興隆 公演情報 KAAT神奈川芸術劇場「アルトゥロ・ウイの興隆」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    かなりハードルの高い戯曲で、へたをすると歴史の解説やあらすじを追いかけるだけになってもおかしくない。上演時間は今回だって休憩込み3時間5分と長い。そこを、草彅剛というオーラをまとった俳優と、ギンギラの大音量ソウルミュージック(ボーカルは大阪弁)を前面に、コンサートのようなノリで、この歴史アイロニー劇をくるんだところがみそ。薬でトリップさせた替え玉を犯人にさせてしまう放火事件裁判、ローマ(レーム)の粛清、等々、見どころもたっぷりあった。

    最初はシカゴのギャングの話(補助金詐欺、商人シートの自殺とか)に、初期のヒットラーのどういう史実が重なるのかわからず、(字幕で理解するものだから)理屈っぽいように、説明っぽいように感じたが、後半は、国会放火事件、オーストリア併合とよく知っている史実を踏まえたものなので、すんなりブレヒトの皮肉や舞台の盛り上がりを楽しむことができた。

    こんな怖いウイを支持するか、観客に問いかけ、マシンガンをぶっ放しておどす。最前列の観客は演出の狙い通り、支持の手を挙げていたが、そのより後の反応はちらほらだった。いつものことだが、日本の観客はちょっとおとなしいところが残念。これが本当に観客が熱狂したら、見事なアイロニー劇になるのだけれど。アメリカやドイツではうまくいくのだろうか?

    ネタバレBOX

    ラストのメッセージは、独裁者の再登場を許すなと、直接的だった。多くの芝居の、問題提起にとどめる、みたいな一線を超えていた。やむにやまれないものが、書き手のブレヒトにあったのだろう。

    それよりも、私が考えさせられたのは、八百屋(民衆)たちが、「この不吉なペストを止めなければならない」「いつかあいつに牙をむくやつがいることを願ってる」と、口ではウイ(ヒトラー)を批判しつつ、何もしないで流されていくところ。私たちの一番の似姿を示していた。

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    2020/01/16 01:36

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