共演者 公演情報 2223project「共演者」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2020/01/13 (月) 14:00

    「想像を超えた」大傑作会話劇。
    ありのままの人間の醜くも温かい姿がここにある。
    以下、ネタバレBOXにて。

    ネタバレBOX

    観劇のきっかけはフライヤー。
    めちゃくちゃカッコいいな、と思ってよくよく見たら、『なるべく叶える』展の
    保坂萌さん撮影でした。納得。

    楽屋での会話で進行していく物語。
    メインである4人の女性の会話は赤裸々で生々しい。
    この脚本は絶対に女性が書いたなと思ったんだけど、男性が書いていたので心底驚いた。
    うーん、すごいな。

    そんな生々しさに、役者さんの熱演が乗ってくるから、もう、とにかく圧力が凄まじい。
    二列目という事もあったし、劇場の構造上、舞台が近いという要素はあったにせよ、
    あの迫力は、私がこれまでにみた演劇の中では最大級の迫力だった。
    シーンによっては、正直、ちょっと怖かったりもしたくらいだ。

    この作品で、私がすごく良いなと思ったのは、女性の言葉遣い。
    「~だわ」
    「~かしら」
    「~よね」
    という、よく見かける「ザ・女性口調」とでも言うものが一切なかったこと。
    私は40年以上生きているけれど、創作ではよく聞くこの口調を、リアルで話す人間を
    片手で十分数えられるぐらいしか知らない。
    だから、演劇でも何でも、女性がこういう口調で話すたびに、何となく違和感を
    感じてしまうんだけど、本作ではそういう違和感が一切なかった。
    少なくとも、私にとっては、没入感を高めてくれた大きな要素の一つである。
    私の周りは、劇中のような口調で話す女性ばかりなので、非常に入り込みやすかった。
    女子同士の会話って、実際あんな感じだもん。

    本作を振り返ってみて感じるのは「ありのままの人間の姿」を見たなぁという事。
    高校の同級生4人が旗揚げした劇団。
    会話の内容からすると10年以上の付き合いになるんだろうけれど、じゃあ、4人は
    仲が良いのかと言われれば、それはまたちょっと違う。
    ショウはやっちゃんの演技力に、そしてやっちゃんはショウの女としての強かさに
    それぞれ嫉妬の感情を持っている。

    この微妙な距離感がものすごくリアル。
    やっちゃんがやったことはもちろん許されることではないんだけれど、その気持ちというか
    衝動というものは、分からないでもない。

    一方でショウは女を武器に出来る強かさを持っているのは確かだけど、その実、一途
    な面もあり、損な立ち位置だなという気も。
    何だかんだで、この同期4人で芝居をしたいと一番強く思っているのは、ショウなのかな
    という気もする。

    自分の演技がやっちゃんに及ばないことは、ショウ自身がよく知っているのだと思う。
    降板するときの、彼女の
    「芝居うまかったらよかったかね」
    というセリフはどうにも切ない。

    追いつきたいのに追いつけない。
    追いつくための努力を認めてもらえない、分かってもらえない。

    力はあるのに、客を呼べない。
    力はないのに、客を呼べてしまう女との共演。

    お互いのストレスが膨れ上がって、ついには弾ける終盤の二人の対峙は、率直に言って
    怖かったし、震えた。

    ただ、この楽屋で4人がそれぞれの思いを、文字通りぶちまけて、ぶつかり合うこのシーンは
    私にとっては、生涯、忘れられないくらいの名シーン。
    ショウとやっちゃんの対決も見どころだけれど、そこに割って入るコングがすごく良かった。
    暴力的ではあるけれど、彼女の言うことは間違いなく正論だし、説得力もある。

    そして最終的にまとめ上げるまなみの姿はもう涙なしでは観られなかったし、さすがは主宰と
    いうべきなのか、そのまとめ方も実にお見事。
    コングの
    「こいつ、すげぇな」
    という言葉は、彼女のみならず、私を含めた観客も同じ思いではなかったか。

    「想像を超えたい」
    っていうまなみの言葉は、ちょっと、ハッとさせられたな。
    彼女たちの魂の叫び、胸にしっかりと刻まれた。

    ・・・が。

    この場面に限ったことではないんだけど、本作のすごいなと思うところは、そう簡単には
    ハッピーエンドにさせないこと。

    楽屋に二人きりになった時、ショウはやっちゃんに、自分の夫が、ピッピであることを告げる。
    3年という時と、それ以上のものを奪われたショウの復讐。
    そりゃ、そうだろう。ショウの気持ちを思えば、いくらコングやまなみの言葉や思いがあったとて、
    そう簡単に納得できるものではない。
    それをこういう形で、復讐の思いを遂げさせたことは、ある意味、書き手の優しさであるようにも
    感じる。

    もしも、このくだりがなく、次のシーンに移ったとしても、それはそれでキレイだし、成立もする。
    「ショウは大人だね」と観客もまぁ、納得はできるだろう。
    けれど、私としては、ショウがああいう形で復讐を遂げることで、むしろスッキリしたし、納得した。
    そんなに人間、キレイなものでも、大人になりきれるものでもない。

    やっちゃんにとっても、やられた!という思いはあれど、自身に対する負い目は軽くなったのでは
    ないか。
    すごく人間味がある、それでいて、スパイスを聞かせた脚本だなと思う。
    この時のやっちゃんの、
    「芝居だけは渡さない」
    っていうセリフが、また良いんだなー。

    そして最後のシーン。
    ここの展開も実にお見事。素晴らしかった。
    ピッピを共通の敵にすることで演出した、ショウとやっちゃんの一体感。
    私、この場面で、すごく好きだったのが、まなみがPCを持ってトイレにこもった時の、二人の
    静かなやり取り。
    周りが脚本の完成を危ぶむ中、まなみの様子を見て、
    「いけそう」
    「いけそうね」
    と脚本の完成を確信する。
    これは痺れた。
    水と油の二人だけれど、お互い、どこかで信頼し合っている部分がある。
    そういう部分を垣間見せる、この演出、ホントに素敵だと思った。

    まぁ、とにもかくにも。

    これほどまでに「生きた人間」を描いた作品にはそうそうお目にかかれるものではない。
    何よりもすごいなと思うのは「胸糞悪い」と言っても過言ではない、人間の醜悪な感情の渦を、
    何ら飾りを加えることなく、心温まる物語にしてしまったその手腕。

    そしてその素晴らしい脚本を、役者の皆様が完璧以上に舞台の上に展開させたと思う。
    特に女性陣は、感情をむき出しにするシーンが多く、その辺りの表現の圧力は冒頭でも触れたように
    本当に凄まじかった。
    「熱演」というのはまさにこういうのを言うんだろうな。

    対して男性陣は三者三様のスタイルで、女性陣ほど、激昂するシーンはないんだけれど、ぴっぴの
    真っ直ぐなバカっぽさ(笑)、かーくんのどこまでも深い優しさ、都倉のビジネスマンらしいカリカリ
    した感じが、目まぐるしいストーリー進行の中で、良いアクセント、あるいは休符になっていたように
    感じる。

    さて、私は劇団関係者ではないので、この物語が、どの程度、小劇場の舞台裏をリアルに再現した
    ものなのかは、分からないけれど、演劇が出来るまでの過程を知るという上では、興味深い部分も
    あったし、勉強になりました。

    いやー、しかし、ホント素晴らしいものを見せて頂いてしまった。
    映像化されたら絶対に買う。
    色々な意味で「ザ・小劇場演劇」だった気がする。
    正直、感じたことの半分も伝えられていないのがすごく悔しい。
    でも、それだけ、言葉に出来ないくらいの魅力が詰まった作品でした。

    役者の皆様、劇団関係者の皆様、最高の舞台を本当にありがとうございました!
    マジで最高!大好きです!!

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    2020/01/15 21:55

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