満足度★★★★★
第一部「明日の幸福(こうふく)」の初演は昭和29年。これまで26回上演されてきた名作だ。舞台は三世代同居の松崎家。経済同友会の理事長である当主の寿一郎に入閣話が持ち上がる。舞い上がる寿一郎は、推薦してくれた党の実力者に家宝である馬の埴輪をプレゼントする、と言い出す。ところが、この埴輪がワケありで‥。その埴輪をめぐるてんやわんやの物語。大奥様を演じる水谷八重子、奥様に扮する波乃久里子の芸は必見。戦後10年ではあるが、まだまだ家父長制度の名残りは生きていたことがうかがえる。当時の政治状況、封建的なるものを風刺しつつ、未来への展望を示したことが人気を呼んだのだろう。新しい世代が古い慣習を打ち破っていく。タイトルの「明日の幸福」にあるように、明るさに満ちていて時代の息吹が感じられる。第二部の「神田祭」は、ただただ美しい。喜多村緑郎はどちらにも出演。女形・河合雪之丞の色気に引き込まれる。