『オレステイア』は英国劇作家のロバート・アイクさんが約2500年前のアイスキュロスの原作をもとに執筆し、演出もされた2015年英国初演の作品です。アイクさんは当時28歳。若っ!
記憶喪失らしい若者オレステスに、精神科医とおぼしき女医が質問をしていきます。上手に控えるカルカス(オレステスの物語の外側にいる予言者)が手渡す証拠物件を検証しつつ、彼の家族に起きた事件をたどっていくサスペンスフルな空気の劇中劇です。
さすがはギリシャ悲劇。強い存在感を放つ登場人物らのせめぎ合いから、家族の愛憎、戦争の矛盾などが堂々と示され、「戦争はダメ。絶対。」「軍隊はダメ。絶対。」「殺人はダメ。絶対。」と思えました…。練馬の殺人事件(農林水産省の元事務次官(76)が自宅で長男(44)を殺害)も現実に起こったばかりで、“子殺し”もすごく身近に、リアルに感じました(恐ろしいことですが)。パンフレット(1000円)の里中満智子さんの寄稿に「たかだか二、三千年で人間の心は変わりはしない」とあり、すごく説得させられました。
演技質はプロデュース公演ならではというか、バラバラな印象でしたね。侍女キリッサと復讐の女神を演じる倉野章子さんが素晴らしかったです。今ここに居るリアルな存在感で、舞台に立っているだけで怖い(笑)。小さい声でも意味、気持ち、役割がはっきりと伝わります。
タイトルロールのオレステス役の生田斗真さんは素直にその場にいる演技で、序盤は悪目立ちすることもなく好印象でしたが、中盤以降は過剰にナーバスな様子で前かがみの姿勢が多いのが気になりました。背筋を伸ばしてまっすぐに立ち、プレーンに語ったり、応答する演技を増やしてもいいのではないかと思いました。