玉川大学芸術学部パフォーミング・アーツ学科 2019年度秋学期演劇公演『画家と尼さん もしくは見せかけのゲーム』 公演情報 玉川大学芸術学部パフォーミング・アーツ学科「玉川大学芸術学部パフォーミング・アーツ学科 2019年度秋学期演劇公演『画家と尼さん もしくは見せかけのゲーム』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     原作は、St.I.ヴィトキエヴィッチ(通称ヴィトカツィ)の「狂人と尼僧」、構成・演出はジェイスン・アーカリ。

    ネタバレBOX

    板上は大きなパネルで側面を斜めに切るような形にしてある為、奥の幅が最も狭く手前が広くなった台形だ。正面奥の中程に自動ドアのような仕掛けがあって、この開閉が適宜上手に用いられている。如何にパフォーミング・アーツ科の劇場とはいえ、凄い設備に驚かされた。機材等も質の良い物を使っている。学科名に即した作品作りでストレートプレイというよりパフォーミング・アーツという方がしっくりくる。また、演じられている作品の原作がヴィトカツィという点でも如何にも大学の専科に相応しいではないか? 内容的にはシュールレアリスム(このレビューを読んでいる読者には当然ダダイスムも考えられるべきだ)或いは「天才の日記」を書き、シュールレアリストの代表と素人に見られがちなダリは、無論狂気を研究したフロイトの深層心理に対する考え方に強い影響を受けていたから、ヴェラスケスの当に大天才を示す作「ラス メニーナス」を巡る寓意との対比を通しながら、似て非なる不条理劇とそれが生まれた背景とを交錯させ、全体として核開発以降は殊に顕著に更に手に負えない武器・大量破壊兵器を生産し続ける狂気の現代に繋がるコンポジッションにしている。
     残念だったのは、歌唱などの際、音響でプロの音声を用い演じ手は口パクで合わせるシーンがいくつもあるのだが、音響で流れる歌声に口パクが合っていなかったり、歌声が流れているのに口が開いていなかったりの齟齬が観られたことだ。演劇や身体パフォーマンスがまさしく鍛錬された身体を基本としている以上、一流の歌い手の音声を用いるなら腹式呼吸は無論のこと身体全体で表現することは、大学の専科で学ぶ以上当然過ぎるほど当然のことだろう。これだけ優れた設備を持つことで、学生たちの身体の方が表現する者として劣化するのでは本末転倒である。

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    2019/12/23 10:13

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