タージマハルの衛兵 公演情報 新国立劇場「タージマハルの衛兵」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    シンプルな二人芝居。タージ・マハルを作ったムガール帝国の王が、同じ美しい建築が二度と作られないように、建設に携わった2万人の手首を切り落とすように、二人の衛兵に命じた…という、事前のあらすじ紹介だった。その命令に従うかどうかの葛藤が描かれるのかと思ったら、もう二万人の手首を切り落としたあとから問題が始まるというのは、予想外だった。しかし、この方が、絵になるし、行為の重みがずっしりくる。なるほど「後で説明」のパターンではないが、まず葛藤から始める。作劇としてはうまい。

    しかも、最後にこのふたりがまた大きな試練に直面する。残酷である以上に、切ない芝居だと思った。

    芝居の語る思想的意味については、公演プログラムに内田樹、岩城京子がこれ以上ないほどスッキリ解説している。権力を支えるのは権力に従うものだという逆説や、ふたりの衛兵の対立のドラマツルギーはわかりやすい。

    それ以上に、この舞台の見どころは、成河と亀田佳明のふたりの熱演、好演にある。掛け合いも見事。思想の図解になっていない。血の通った悩める人間、弱い人間の、ささやかな夢と大きな愚行を、笑いとメリハリのある見事な劇に仕上げていた。
    戯曲は『悲劇喜劇』1月号に掲載。

    ネタバレBOX

    同じような王の残酷な仕打ちは、モスクワの赤の広場の脇にある聖ワシリイ大聖堂建設の逸話として聞いたことがある。西でも東でも権力者は同じような事を考えるものだと驚いた。

    この王の非常な処刑を、美を終わりにするもの、美を生き延びさせるためには王を殺さなければという発想は、思いもかけなかった。人間への残酷ではなく、美の息の根を止める行為という見方は、ハッとさせられた。その美を「女」は例外と言いつつ、「鳥」に託すイメージも発想の柔軟さの賜物である。

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    2019/12/19 01:07

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