満足度★★★★★
戊辰戦争で五稜郭後も降伏を拒み、蝦夷地を奥へ奥へ逃げ続けた二人のサムライと、連れになった一人のアイヌ男。「俺たちに明日はない」的な、彼らのロマンとニヒルと人情が温かい。和人のアイヌをしいたげる非道への怒りが舞台を熱くにえたぎらせる。
追う側の政府軍の上官の非情さには恐怖を覚える。薩摩に押さえ込まれた長州の人間で、手柄を焦る気持ちが、その無慈悲な執念に説得力を与える。阪本篤が現実味のある悪役を好演。その執念深さはレミゼラブルのジャベール警部のようだった。
ロードムービーならぬ、ロードプレイ。テンポ、ホンの人物像の具体性、場面と出入りの整理、衣装、日本刀などの小道具、和太鼓の細撥の乱れ打ちなどを使った大音響の暗転の迫力など、総合的な舞台づくりも良かった。
最後の決闘の殺陣も見事。2時間5分休憩なし。佐々木譲の原作を読みたくなった。