世界はあまりにも 公演情報 劇団 脳細胞「世界はあまりにも」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2019/11/23 (土) 18:00

     山梨県の携帯電話の電波も届かぬ山奥の別荘。蜂蜜の製造販売を営む社長とその家族が長男の友人と共に滞在している。嵐の夜、車の故障で立ち往生していた平山家の家族四人を社長は別荘に招くことにする。これが劇の発端である。
     冒頭の社長一家がリビングで小説の中の一人の女優の死をめぐって特殊な訓練を受けた役者の根源的欲求に触れた会話が観客の関心を強く惹きつける。他者を演じることが当たり前の役者がそのような特殊な訓練を受けると、役者同士で自他の区別がつかなくなり、各自が持っている根源的欲望が時に別の人間に乗り移ってしまう。小説中の女優はだれかの殺人願望が乗り移った男に殺されたのだが、その殺人願望は実は女優の親友であった女優の根源的欲求であったのだ…。
    嵐が激しくなり、別荘は停電する。社長と平山は協力して停電を修復する。明かりが戻って、社長一家の知人のシャンソン歌手が訪ねてきた際、別荘の軒下に避難していた日本縦断中の旅行者を別荘内に招き入れたことから舞台は一挙に緊張の度を増す。

     山奥の別荘という閉塞空間に居合わせる社長一家と平山一家と旅行者一人。蜂蜜の製造方法もろくに知らない社長と、社長の裕福な生活を羨みながら彼に取り入る平山と、失業中で鹿児島から北海道まで徒歩で縦断しようとしている袖ケ浦。平山は社長から重役待遇で招かれる身だから、暖炉の前で身体を温めている袖ケ浦が自分と同様に社長の好意を受けていることに我慢できない。配電盤の電線が切られていたことから、平山は袖ケ浦を怪しいと睨み、彼の持ち物を点検しようとする。袖ケ浦なぜ自分が電線を切った犯人扱いをされるのか理解できない。彼は不当な嫌疑を受ける屈辱に耐え切れず憤然と別荘から出てゆく。この場面における平山の袖ケ浦に対する態度は異様なほど高圧的だ。度し難いことに、袖ケ浦を別荘から追い出すことに消極的だった社長と妻が「そういわれてみればやっぱり怪しい」と言い出す。
     別荘には社長夫妻の知らぬ悪意の存在がある。長男・長女と長男の友人井川である。長男は「欲しいものはなんとしても手に入れるべきだ」と揚言して憚らない。兄妹二人はそれぞれ不満を持っており、長女の誘拐事件をでっちあげることによって両親から身代金を搾取しようと企んでいる。二人は平山家の長男・長女と共謀しようとするが、共謀に慎重だった平山の長女が陥落した瞬間、舞台は暗転。

     この後の結末についてはなぜそうなるのか、わからない。冒頭の根源的欲求の話はどこへ繋がったのか? 長男と長女の偽装誘拐はどうしたのか? 前夜の出来事はすべて夢だったのか? 
     スペイン大使のパーティに招かれて外出する社長夫妻を見つめる平山の妻は「昨夜の夫への重役待遇のお話はどうなったのでしょうか?」という眼差しを向けているのだが…。

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    2019/11/27 00:24

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