シェアハウスカムカム 公演情報 劇団娯楽天国「シェアハウスカムカム」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    名前も顔も一致しなかった住人達が打ち解けた頃、立ち退き騒ぎが起こり何とか阻止したいと立ち上がったが…。笑劇にして衝撃的な面白さは観応え十分だ。
    (上演時間2時間20分)

    ネタバレBOX

    カフェ ラッキーカムカムという看板が上手側に掲げられ、往時の雰囲気を残すカウンター。正面に和室(障子)、このハウスの出入口、下手側に1室、トイレ、下手客席寄りにソファー、楕円テーブル。2階への彎曲階段があり、途中で別れ幾つかの部屋がある。随分と凝った、そして丁寧に作り上げたセットである。このシェアハウスの住人たちはお互いの顔もよく知らず、ましてや素性など知る由もない。しかしこのレトロなシェアハウスには、存亡の危機が迫っていた。

    全体的な雰囲気は昭和時代を感じさせる。まず劇中流れる曲が「リンゴの唄」「上を向いて歩こう」等、そして住人達の騒ぎようがバブル全盛期のようで、ディスコ風の派手な衣装、また戦時中の空襲と連動させた穴掘りシーン、これらの背景が舞台セットのレトロ感と相まってそう思わせる。何より立ち退きの理由がバブル期の地上げのような損得 勘定ならぬ感情が蠢くところ。

    コメディタッチとしては、色々な笑いネタ、例えば外見だけで言えばガングロ女(随分前に流行ったメイク)、他人に成りすまして住みだした男の誤解による非合法植物栽培のドタバタ等が騒々しく描かれる。物語の魅力は個性豊かな住人達の1人ひとりのバックグラウンド(酒乱で暴力を振う夫から逃れる、不法滞在ベトナム人など)を丁寧に説明し、騒がしさの中に哀愁を漂わせる人間描写。そして”家”は、住む場所としての在りようから”思い出”という何物にも代えがたい存在であることを強調する。そこに今を生きる住人達と過去からの思い出を共にしてきた老人の心が通じ合い、さらに行くところがないという共通の問題-立ち退きに抵抗する滑稽な、そして切実なる姿として描き出す。

    先に記した老人-このハウスの大家の叔父にあたる人物が夜な夜な床下に穴を掘る。実はこのハウスは男の育った家であり、家族との思い出の場所でもある。その住人達とハウスを取り壊すことに抵抗するが…。穴を掘る理由は戦時中のトラウマ。防空壕として家族を守ると同じ感覚で、ハウスに住んでいる人々をミサイルの脅威から守るという使命感のようなもの。何となく現代のきな臭い状況が垣間見えてくる。この件は、笑いの対極のような泣ける感動シーンである。この笑い泣きのバランスが絶妙で感情を上手く揺さぶる。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/11/22 23:39

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