満足度★★★★
以前にも、サンハロンシアターさんで同名の舞台があった。その時の主要人物も竹内まりやさんファンの男性たち。その時はコミカルな部分がけっこうあったように記憶している。それから時は流れ、今回の当日パンフのあおきさんの言葉にもあるように「日本は世界一冷たい国」になった。そして、今の空気を反映するかのように、前回にくらべ、ダークな部分が多かったような気がする。「もう一つ名前を作るの…。」「叩くのよ…。」と言いながら無機質な笑みでスマホをいじる、髙山さんが演じた利恵は「SNSで自己愛を貫く。」今の日本の象徴みたいな人物なのだろうか。他にも妻に「モラハラ」認定された夫。「妻」ではなく「介護人」が欲しいだけだった男。過去の過ちから名前を変え逃げ惑う女。などなど、お世辞にも「幸せ」には見えない登場人物がどう自身の「人生の扉」を開けるのか?それぞれの結末が散漫になることなく、きちんと纏められていたところは素晴らしいと思った。「そこには愛がないから叩かない。」利恵にそう言い放ったさとし、かっこよかったし、少しでも心の奥でそう思えることが出来たら、日本は「世界一冷たい国」にならなくてすんだかも?と思わされる。
椅子とパイプを上手く使って「背景」にしたアイデアが良かったし、初めて彼女がやってくるので、部屋をてんやわんやになりながら片付けているあつしと息子・真央のコミカルなシーンは暗転の間の場面転換を上手に利用しており、あつしと真央を演じたさわさんと垣内さんの息ピッタリなドタバタな演技もまた面白く「暗転」もこういう使い方があるのかと感心した。
客入れ時のBGMがこれまた素晴らしく。竹内まりやさんの曲をカラオケで歌うであろう世代なら「感涙」もの。かくいう私もそうである(笑)
「ハッピーエンド」とは手放しでは言えないが、それでも各々は前に進んでいる。「人生の扉」は自分の力で強く開けるもの。そう言ってくれていたような暖かさが残る作品だった。