満足度★★★★★
漁師を営む一家、頬を撫で潮風が吹き抜けていくのを感じる舞台。
ここで水揚げされるシラスはさぞかし美味しかろうと。
そして何と音無美紀子さんと太川陽介さんが夫婦役!
音無さんは日本の肝っ玉母さんそのもので、気性や所作が自分の母にもちょっと似ているものだから格別にリアル。
網元の家へと入るカタチとなった太川さんも自然体な父親の風格、全くもって長年連れ添った夫婦であり、それぞれの茶目っ気がとても可愛い。
(太川さんが蓄えた白色の多い髭はどこからどう見ても本物にみえるのですが)
ただし、ここはかつて水俣病の犠牲者第1号になってしまった家。
発症当時は原因がどこにあって当然ながら何の病気だという事も全く分からず。
確かにその影をしっかりと感じさせながらも、長男夫婦がこっちに越してくるのを次男と一緒になって浮足立ち迎え入れる魅力的な家族模様として引き込まれてしまいます。
過去の事件さえなければ間違いなくワチャワチャと温かな幸せを心ゆくまで謳歌できたであろう家族。
切なく噴き出してくる各々の心の内。
終盤に向けての演技・演出・メッセージには、もう言葉が出て来ません。
現実に基づいた骨太で素晴らしい公演でした。