風を打つ 公演情報 風を打つ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 満足度★★★★★

    漁師を営む一家、頬を撫で潮風が吹き抜けていくのを感じる舞台。
    ここで水揚げされるシラスはさぞかし美味しかろうと。
    そして何と音無美紀子さんと太川陽介さんが夫婦役!
    音無さんは日本の肝っ玉母さんそのもので、気性や所作が自分の母にもちょっと似ているものだから格別にリアル。
    網元の家へと入るカタチとなった太川さんも自然体な父親の風格、全くもって長年連れ添った夫婦であり、それぞれの茶目っ気がとても可愛い。
    (太川さんが蓄えた白色の多い髭はどこからどう見ても本物にみえるのですが)

    ただし、ここはかつて水俣病の犠牲者第1号になってしまった家。
    発症当時は原因がどこにあって当然ながら何の病気だという事も全く分からず。
    確かにその影をしっかりと感じさせながらも、長男夫婦がこっちに越してくるのを次男と一緒になって浮足立ち迎え入れる魅力的な家族模様として引き込まれてしまいます。
    過去の事件さえなければ間違いなくワチャワチャと温かな幸せを心ゆくまで謳歌できたであろう家族。
    切なく噴き出してくる各々の心の内。
    終盤に向けての演技・演出・メッセージには、もう言葉が出て来ません。
    現実に基づいた骨太で素晴らしい公演でした。

    ネタバレBOX

    今も杉坂家をバッシングするなんて怒りエネルギーの方向が全くもって間違っている。
    リテラシーの大切さを痛感しました。

    ラストでの「自分が非難する側にならなくて良かった」という言葉に愕然。
    客席から観ていると、あまりの周りの仕打ちに「なっ!なんて酷い事を」という思いだったのに、この家族ですらそう思ってしまうのなら自分だって間違いなくそちら側に行ってしまったのであろうと。

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2019/11/08 (金)

    俳優座劇場にてトム・プロジェクト『風を打つ』を観劇。
    1993年の熊本・水俣を舞台とした家族のお話。3年前に拝見した同団体の『静かな海へ―MINAMATA―』で、それまであまり詳しい知識を持ち合わせていなかった水俣病という公害問題について様々な学びを得られた中で、今回はそんな水俣に住むとある家族の物語ということもあり、個人的にとても興味のあるテーマの作品でした。
    水俣病は高度経済成長期にあった1956年に熊本県と新潟県において発生・発見が認められた公害ですが、今回の作品はその公害発見から37年後の1993年を舞台としたもの。その間に公害自体は改善が図れたものの、40年近い月日が流れているのにも関わらず、尚様々な問題を抱え、水俣地区の人々にのし掛かっている様子が随所に垣間見れて、やはりこの手の大きな公害問題は一度起きるとその完全解決にはとてつもない年月、そこに暮らす人々の苦悩・努力などが伴うという何とも言えない重みのようなものを痛感させられました。しかし、この作品はそのような社会派の内容であると同時に、決してその悲観的・マイナス的な要素だけでなく、むしろ水俣公害を乗り越え、バラバラになりかけていた家族の希望溢れる再生の物語であったようにも感じます。クライマックスシーンでの家族一丸となっての太鼓生演奏は何ともまぁ素晴らしいの一言でした。家族の愛情、家族の素晴らしさを感じました。ストーリー展開上でも当然感動のラストシーンではありますが、太川陽介さんをはじめとする男優3名の熱量が凄まじかったです。前方中央の座席だったこともあり、演者さんの全身を使った太鼓演奏に圧倒されました。とてもカッコ良かったですし、これはやはり劇場で観劇しないと味わえない興奮だなと感じました。
    トム・プロジェクトさんの作品観劇は今年2月の『軍人と兵隊』以来9ヶ月ぶりでしたが、毎度のことながら自分自身の知識アップになるとともに、心地よい笑いシーンも盛り込みながらテーマに沿って丁寧に描かれている印象を受けるので見応えがあるし、とにかく色々と考えさせられます。『萩咲く頃に』『にっぽん男女騒乱記』で拝見した音無美紀子さんは今回は肝っ玉母さんのような役。相変わらず好演が印象的だと感じました。また、個人的にテレビの旅番組のイメージが強い太川陽介さんのお芝居は初めて拝見させて頂きましたが、何となく普段から印象の強い笑顔の中に、九州男児の役らしい強さのようなものも感じました。他の3名の演者さん含め熊本弁も違和感なく使いこなされていたと思います。やはり今回もトム・プロジェクトさんの作品は“当たり”でした。

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