8人の女たち 公演情報 T-PROJECT「8人の女たち」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ミステリー部分は、女性推理小説作家アガサ・クリスティの戯曲「ねずみとり」 (The Mousetrap) を、女性心理面は「黒い十人の女」(市川崑監督)を連想した。女8人によるサドマゾ的な心理サスペンスが緊張と微笑をもって描かれる。もちろん描き方はミステリーであるから観客も一緒になって謎解きをするワクワクドキドキ感が楽しめる。
    (上演時間2時間20分 途中休憩15分)

    ネタバレBOX

    セットは富豪屋敷のリビングルーム。上手側が玄関に通じる通路、腰高の洋箪笥とその上に固定電話、中央は奥に暖炉、客席寄りは応接セット、下手側に2階へ上がる階段と中2階に主人の部屋。外にはガラス越しに枯れ木が観える。クリスマスの飾り付けと合わせて冬時期を表し、後々の大雪による遮断・孤立状況へ追い込みの伏線が窺える。そして富の豊かさに反比例するかのように心の貧しさが浮き上がる暴露劇であり告白劇。

    事件が起きたのは、この屋敷の長女シュゾンが留学先(イギリス)から帰宅する日の早朝。クリスマスを過ごそうと集まった家族や使用人、そして後から勝手にやってきた主の妹が加わった8人の女。閉ざされた状況、外部からの侵入は難しく考えられないことから、この中の誰かが犯人である。お互いに疑心暗鬼に探り合う心理サスペンス。ミステリーとしては、シュゾンが一足早く帰宅し主である父親に相談事を済ませ、5㎞離れた駅に戻り、再び列車に乗り出迎えた母親と会う。カトリーヌ(16歳)が一晩中盗み聞きをする間、誰にも目撃されないなど不自然な説明もあるが…。

    犯人から見た女7人は、この家の主人を苦しめる、そぅ辛い七味唐辛子のような存在らしい。恨み、辛み、妬み、嫉み、嫌み、やっかみ、ひがみ、という嫌悪と欲望が渦巻く醜悪さに我慢がならない。この心理状況を1人ひとりの女の秘密、行動や行為に負わせ、その総体が犯行に及んだという動機付け。ちなみに主は登場しないが、女たちの言動から人物像が浮き上がる。当初は優しく誠実な紳士像であるが、裏では事業は逼迫し、それでも女を囲い淫蕩に耽る。犯人はそれも承知しているようであるから、男を独占したい願望があるのだろうか。犯人は、女性達の仕打ちに疲れた主の心の隙に付け込んで...。

    物語も然ることながら、8人の女優の演技が素晴らしい。それぞれの立場のキャラクターを立ち上げ、口撃の攻守を変えながらテンポ良く展開して行く。妻の毅然とした態度、長女のお嬢さん風な振る舞い、次女の元気溌剌な行動、実母の抜け目ない狡猾さ、実妹の茶目っ気、年長の使用人の鷹揚と動揺、若い使用人の我儘と不遜、そして主の妹のミステリアスさ、など一筋縄ではいかぬ女性像が垣間見える。人間の強欲について薬味を随所に効かせ、ミステリー仕立てにすることで観客の集中力を逸らせない巧みな作品である。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/11/16 23:36

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