mark(X)infinity:まーくえっくすいんふぃにてぃ 公演情報 劇団鋼鉄村松「mark(X)infinity:まーくえっくすいんふぃにてぃ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ナンセンスコメディかと思って観ていたら、その世界観というか宇宙観に魅せられた。表層の滑稽さ、しかしそれに止まらず、いつの間にか人との出会いと別れといった充足感ある物語に変わっていく。それが心地良いテンポで紡がれるから堪らない。
    2016年黄金のコメディフェスティバルにおいて最優秀脚本賞、最優秀演出賞、観客賞、そして最優秀作品賞etc.を受賞した「mark(X):まーくえっくす」をベースに新たなるSFパラレル・ディストピア・ラブコメディ!...という説明通り、素直に面白いと思える公演。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    舞台セットは色違いの枠があるだけのシンプルなもの。パワレルワールド、異星といった世界観・宇宙観を表現するため固定したセットは作らない。このイメージは ドラえもん のどこでもドアを連想させる。設定は時空間だけではなく、異星も絡んだ壮大なものだが、それは荒唐滑稽を表現するためのもの。枠はもちろん時々持ち込まれる銀パネルは時空間の歪み、または裂け目を表すが、その仮想というか非現実性の世界を手動で動かすという奇知の面白さ。

    梗概は説明の通り...キャッシュカードを失くし、バイトに行く電車賃も無い主人公・ひろゆきは開き直ってバイトをさぼり徹夜でアニメを見ていた。ひろゆきの前に突然空間を割って美少女が現れる。名前はエプシィ(悪支配の四天王の1人)。この世界を支配、管理するために平行宇宙からやって来た、というもの。仮想なのか妄想なのか、その混沌とした世界観がいつの間にか現実を揶揄するような面白さに変わる。悪の支配というディストピア...無為のような暮らしぶりの ひろゆき にとって管理社会は適していると…。管理社会は、強制的に何かをしなければならず、不自由であるが行動はさせる。まさしく、冒頭の ひろゆき の生活態度に対する皮肉である。

    枠を潜るという簡単な動作で世界観を変え、衣装やメイクという外見で現実世界との違いを演出する巧さ。また個性豊かというか特異な人物?キャラを立ち上げ、その関係性を次々に展開させ観客の意識を逸らせない。いつの間にか恋愛であり親愛者がパラレルに連なり出会いを連想させる。邪悪な世界があれば、逆に正義の社会も存在する。その合わせ鏡のような人物・フリーダムVとエプシィが仕える悪の総統の対決が笑える。外見・容姿も含め全てを観(魅)せるに注ぎ感心させられる。またエプシィを演じた小山まりあサンの怪演がこの世界...公演を支配していると言っていいほどの演技だ。

    パラレルワールドであるからどこかで見たことがあるような、その既視感が物語の肝になっている。人は出会いがあれば別れもある。時空間移動はそんなセンチメンタルな思いを簡単に乗り越えていく機知があると思うが…それでも公演の終盤は惜別といった寂しさが少し漂う。
    ちなみに冒頭、常識的な暮らしを説いていた鈴木君、いつまで経ってもMARKⅠ、MARAⅡ・・・MARK(x)にもなれず仲間外れのような。劇的に笑いをとると承知しつつも、世界観が異なれば常識・非常識といった概念も異なる、そんな意味深さを感じさせる公演であった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/10/25 16:37

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