Photograph2019 公演情報 劇団カンタービレ「Photograph2019」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    実話をベースにした感動作。劇団カンタービレ10周年特別公演は観応え十分、自分は好きです。今まで観てきた公演(コメディタッチ)とは趣が異なり、感情が大きく揺さぶられました。観劇できて良かったです。
    (上演時間2時間強)

    ネタバレBOX

    物語は、体調不良で検査入院した柴崎時子が、実は脊髄小脳変性症という難病になっていることが判明し、家族(時子の実父・一太郎、夫・正夫、長女・沙織、次女・恵、長男・健一)をはじめ近所の人や病院関係者が介護や医療にあたるが…。その闘病記のようなもの。内容的には重苦しいが、時折ユーモラスなシーン(時子の姉妹や近所のおばちゃんの姦しさ、一太郎のふるまい等)を挿み人生の哀歓をしっかり観せる秀作。公演の見所は、夫が定年前に自己都合退職し介護をし出す、同時に時子がリハビリに励む様子、そして家族がそれぞれ生きる中で出来得る限りの介護に向き合う姿を感動的に描いているところ。

    物語は、本筋-症状が顕著になり8年にわたり介護(要介護5)している現在と脇筋-2人が付合いだした頃や新婚時代を往還させ展開していく。本筋は、順々に時を経過させることで病気の進行と介護(される本人も含め)の辛苦、生活状況が一変したことをしっかり表す。冒頭、時子が元気だった頃、夫は仕事一辺倒、子供たちは母親に甘えてばかり。それが介護によって生活環境が激変し、それまで妻に家庭内のことはすべて任せきりにしていたことが浮き彫りになっていく。状況と情況の変化を刻々ときざむことで観客の感情を揺さぶる上手さ。

    物語を支えているのは舞台セット。柴崎家の居間、病院の入院部屋、医師室、集中治療室など、どれもが丁寧でしっかり作り込んでいる。その場転換も観客の気持を逸らさないため、会場入り口近くにある別スペースで若かりし頃の柴崎正夫・時子の微笑ましい姿を観せ、本筋と脇筋をうまく繋ぐことで違和感なく物語が展開する。時代間隔はピンクの公衆電話-自宅の黒電話という固定電話から現代はスマホに変わるという小道具で表す。もちろん1役2名で本筋-脇筋で役者や衣装等も違うから一目瞭然であるが。

    現代医学では治癒の見込みのない難病、しかし医療施設における短期間での転院という不都合、困難さへの批判、また日本の神経科医療の後進性への課題など社会性も垣間見せる。この社会性と(家族)介護という個人性の両面を持ち合わせた公演は、観る者に感動を与え、そして考えさせる。ラスト、ベットで横たわる時子への照明と次女・恵が出産したであろう赤ん坊(命名は時恵)の泣き声、死と生の交差(バトン)の演出は見事。
    最後に、この素晴らしい公演は役者の演技なしでは成り立たないことは言うまでもない。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2019/10/21 00:13

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