なにもおきない 公演情報 燐光群「なにもおきない」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    梅ヶ丘BOXの狭小空間の圧迫感を活用した舞台。チラシの時点で念頭にあった『屋根裏』(2002年以来再演を続けるヒット作)をやはり思い出させる、特徴ある空間に多彩なエピソードを盛り込んだ作り。四角の空間(屋根裏)や右から左へ下る坂(今作)じたいは、その実体をアピールしている訳だから、ひどく具体性を帯びるのに、言葉が喚起するイメージによって何かを象徴する抽象的な図形のように見えて来る。「屋根裏」のように、じっと見てると別物に見えて来る錯覚は、単なる傾斜の板だけでは起きなかったが、狭い斜面上を行き来する二次元感覚から、ふと奥行を見せる照明が入ったり、(観客を含めた)劇場空間を感じさせる演出など趣向は考えられている。
    また今作では、奇妙な振り付けで無言で斜面を行進する姿や、シュールなシーンが多彩さを印象づける。失踪亭主や炭鉱、秘密の埋葬空間といったエピソードは具体的な「物語」に属するが、中でも炭鉱の筑豊方言を使っての台詞は書き手・坂手洋二の腕を見せつける名調子で、具体と抽象のバランスの崩れを巧みに回避していた。
    ただ「なにもおきない」とはワードとして別物の「なにもしない」を接合するあたりは力技であった。伏線とその回収という点ではこのワードを示していれば収まりよかったかも知れないが、口当たりの良さを求めているのか君は、と一蹴され兼ねない気もする。

    ネタバレBOX

    坂手洋二・燐光群がしばしば作るアイデア舞台を思い出してみた。
    1シーンを分数で縛った『8分間』、『3分間の女の一生』。
    劇場の使い方に凝った『最後の一人までが全体である』(観客はステージ奥正面の少し高めの扉から入場、客席からの視線を浴びる。開演と同時に劇場に閉じ込められる)『ゴンドララドンゴ』(スズナリの何列目かに塀を据え、視界の下半分を見えなくした)、『お召し列車』(横長の座高円寺を列車の内部に。「8分間」は駅ホームだった)
    そして特徴ある装置がコンセプトそのものである、『屋根裏』そして本作。
    その他、翻訳物だが旅客機のコクピットのみで展開する、様々な航空機事故を再現する『CVR(チャーリー・ヴィクター・ロミオ)』。梅ヶ丘BOXだったが収容数僅かな間隔の空いた対面客席を作り、その間を役者が駈けずり回る『犀』。
    梅ヶ丘で見た印象的な舞台には『象』『ブーツ・オン・ジ・アンダーグラウンド』もあった。長く観劇している劇団の一つではあるが観劇本数は最多かも。個人的な思い出に浸ってしまった。

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    2019/10/19 12:18

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