満足度★★★★★
鑑賞日2019/10/11 (金) 14:00
座席1階I列14 番
2019.10.11㈮ PM14:00 池袋シアターグリーン BIG TREE THEATRE
夜遅くから今までにない大きな台風が来ると言われていた夏の暑さの名残を感じる金曜日の午後、池袋シアターグリーン BIG TREE THEATREに松本 稽古さんの出演されているENG第十回公演『探偵なのに』を観に足を運んだ。
劇場に入り、席に着いて舞台を見ると、深紅の絨毯、部屋の左右に小さいテーブルと二脚の紅いビロード張りの椅子が二脚、向かって右手のテーブルの後ろには壁の上まで届くかと思われる本がぎっしり詰まった本棚が一架、左右の壁際にも赤いビロード張りの椅子が二脚ずつ置かれている部屋。
一軒の豪邸の一部屋で展開されるのは、推理小説に登場する難事件を鮮やかに解決する“探偵”に憧れたわけじゃなく、ただただ喫茶店で見かけて以来、気になって、心惹かれたあの子(森岡 悠さん)が妙な事件に巻き込まれそうな気配を感じ、危険が及ぶ前に鮮やかに守ってあげたくて、尾行をしたら、妙な事件の容疑者として、怖い人たちに囲まれた挙句に監禁され訳が解らない興信所の探偵(図師 博光さん)のいる部屋に、探偵を監禁した怖い人たちに次々と捕まり、放り込まれ増えて行く謎の人々と、気になっていたあの子が、何とこの家のお嬢様、此処にいるいる人たちは誰?この家で何が起ころうとしてる?どうしよう、推理しよう、自分を守るために、捜査しよう、だって俺犯人じゃないしと始まったミステリー?なコメディ。
まだ、千穐楽を迎えていないので、あまり詳しい感想が書けないので、好きな場面や台詞について少しだけ書こうと思います。
好きでオススメなのは、オープニングとラストのダンスシーン。
このダンスがちょっとアメリカンコミックのアニメや映画を見ているみたいな、コミカルさと軽妙さを含みながら、とってもキレがあって格好良く、登場人物やストーリーのヒントが隠されていて見ているだけで楽しくなる。
好きな台詞は、何度か興信所の探偵から発せられる「探偵は人を見る仕事。人を見続ける仕事」という言葉。人を見るから、見続けるからその人の持つ本質、人間としての真の部分が見え、分かり、だから気になるあの子が何かに巻き込まれているのが気づいて、守ろうと尾行する探偵の一途な思いが伝わってくる。
『人を見る仕事。見続ける仕事』良い言葉だなと思う。人を見るというのは、いい事ばかりでも、美しい事ばかりでもなく、人の醜い部分、嫌な部分も見る。それでも目を逸らさずに見続ける事で見える真実、見える事がある。
探偵が探偵を続けるのは、それでも結局人間が好きで、少なくはあるけれど、純粋で美しい心を持つ人に出会う事があり、好きで、人を信じよう、信じたいという思いがあるからではないかと思った。
一歩間違えば、仕事ではなく個人的な思いからの尾行は、ストーカーと言える行為だが、冴えないちょっと情けない探偵が終盤、何度だかとっても格好良く見えて来る。
全編に笑いが散りばめられていて、何も考えずに、その可笑しさ、面白さにお腹の底から笑い続けているうちに、とってもハッピーな気持ちのまま、幕を閉じていた。
心も頭も空っぽにして、笑い愉しめる最高に面白いコメディでした。
文:麻美 雪