終夜 公演情報 風姿花伝プロデュース「終夜」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    風姿花伝プロデュース第一弾を飾った「ボビー・フィッシャーはパサデナに棲んでいる」の同作者の作品。演出然り。「パサデナ」と同じく夜部屋で交わされる会話を聴き入る濃密な会話劇であるが、前回は何処か外出から帰宅した一家族のそれ、今回は母の葬儀で久々に顔を合わせた兄弟とその連れ合いとのそれ。老成による退廃と傲岸さ、ナイーブさは岡本健一にしか出せないのでは、と思わせる嵌り具合。栗田桃子、どこかで見たが誰だったか(例によって役者名チェックせず観劇)、思い出せない程の役柄の振り幅・・等々言葉にするだけ野暮に思えてくるので止めにする。
    家族という内臓の脈動に4時間弱(途中休憩2回)、どっぷりと浸かる贅沢な時間であった。
    亡くなった中嶋しゅう(「パサデナ」に出演)の「5回までは応援する」との言(遺言となった訳だが)に応えた風姿花伝プロデュースのその回を迎えたが、もう5回は続けて欲しい。演目の選定は大変だろうけれど。。

    ネタバレBOX

    4人の人物の柄がくっきりと分かれており、取り合わせが絶妙。一方のカップルの男は他方の女とどこか相性がよく、逆も然り。幸福な組み合わせでなかったらしい夫婦はしかし、互いの関係の取り結び方の模索を突き進めた結果である所の風景を垣間見せ、一方の非がより際立って見えるケースでさえ、ある種の対等さ(つまりそれが互酬関係を保持しているという事な訳だが)を感じさせる。特殊な例ではなく、大なり小なり男女が陥る倦怠を互いが言葉を探し、過激にせよ交わす事で、顕在化させているとも言える。人が見る夢が砕かれた時人はどう生きるかを眺める劇と言い換えるも可か。

    男を困らせている女は、決別こそ最良の解決だと最後には思わせられる(同じタイプの女性をよく知るので非常によく判る)。だが彼女という存在を俯瞰で見れば(受話機を置いてみれば)、中毒患者と同じく己が桎梏から逃れようともがく存在。哀れで愛おしく見えてくる。
    自分と同じ考えを相手に強要しながら甘えたがる身勝手な男は、ある時まではきっと女の関心を引き出し、最後には女に幻滅を与えたらしいと推測されるが、退廃的な兄より余程感情がストレートで人間的に見え、心の離れた妻に何も出来ない哀れさが募る。
    この劇に何を思えばよいのか判らないが、人の心模様が充満し、役者の見事な台詞と身捌きを通してそれに触れる喜びがある。

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    2019/10/14 04:27

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