リリスの憂鬱 公演情報 有機事務所 / 劇団有機座「リリスの憂鬱」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     秀作である。べシミル!!(少し追記2019.10.12)

    ネタバレBOX

     旧約聖書の楽園追放を描いた絵には、1匹の蛇が描かれており、悪魔の化身だという話が人口に膾炙しているし、イブが知恵の実を食べたのは「悪魔」に唆されたのが原因とされ、為にヒトは善悪を知り楽園を追われたことになっているが、旧約の別の部分には神が己が姿に似せてヒトを創った時、男と女を創った(旧約聖書創世記6日目)とされており、アダムの最初の妻はこの時創られた女であったと考えられる。一方、イブはアダムの肋骨から創られたと言われ楽園で追放されたのはアダムとイブであった。ところで、楽園追放の絵に描かれた蛇が実は蛇に姿を変えられたリリスであった、という解釈が今作の最も大切な点だ。この辺りの事情の細目は無論、作品上で述べられ、聖書がヘブライ語からラテン語に翻訳された時の翻訳ミスが原因でカソリックでは、リリスが悪魔視されたとするが、今作の解釈では、リリスは自立心に富む女性で性行為の際、女性は男性の下の位置に体を横たえるべきだとされていたことに反発した為、蛇に姿を変えられ、悪魔と看做されもしたというのだ。(閑話休題 日本神話には、これと似た話がある。言うまでもない。伊耶那岐と伊耶那美との間に生まれた最初の子・蛭子にまつわる話で「古事記」に収められた有名な話だから誰でも知っていよう。一応内容を記しておくと、子作りの際に女神である伊耶那美から先に男神の伊耶那岐に声をかけタブーを破ったのが原因で不具の子・蛭子が生まれた為、眼も鼻も口も耳も無い蛭子は、葦の舟に乗せられ流されてしまい、神々は儀式をやり直したという話だ。)
     話を元に戻そう。リリスは自立心の強い女性であったという点から彼女は現代の何処かに実在し得る男女同権論者として現在も脈々と生き続けているキャラとして描かれている。一応、話はチトー亡き後大混乱に陥り内戦迄経験したユーゴ辺りを彷彿とさせ、極めて現代的な緊張感ある社会で生活するブルジョア家庭を舞台に展開する。(この辺りの設定も実際の紛争中にバイオリンを弾き映画にもなった作品があるので、増々身近に感じられる作品でもある。)
     無論、現在の日本の社会状況が、戦前のそれにそっくりだと、多くの知識人、お年寄りが表現する通り、現代日本の社会表層のみならず、産業構造、産業体制、そして高度経済成長を支えてきた製造業の空洞化があり、金融破綻があることも見逃していないのは、貨幣についての言及があることからも明らかである。これはグローバル経済の根幹にある大問題、貨幣とは何か? に通じ、信用創造をどう解釈するかにも通じるばかりではなく、資本主義の長期停滞傾向から、欧州では既にスペイン、イタリア等の国内で現実化している協同組合による企業経営(全企業の1割程度)や社会性を持つ産業の起業を援助する金融システム構築の試み等、MMTのような一時凌ぎの非本質的な理屈では無い議論が巻き起こっていることも考慮するなら、極めて本質的な問い掛けが為されていると言っても良いであろう。この辺りの情報については近い内に更に詳しい情報が某所からリーフレットになるから、追って追記する。
     ところで、今作にも登場するパルチザンの内部分裂に関する自分の意見を述べておく。普通の人が自己規定をし、其処から論理を発展させてゆく場合、先ず殆どの人は、己の規定した論理の基底に戻って再検証を繰り返すという作業をしない。その結果、あるオーダーを規定の物としてしまうことでその論理は尖鋭化以外の道を失ってしまう。論理の性質とは、そのようなもので他の道は無い。だからこそ、対論・討論が大切なのだが多くの人はその点を見失い、尖鋭化すればするほど、最初はほんの1mmの差に過ぎなかったものが無限の差になって現れ、遂には力にものを言わせて決着を付ける他無くなるのである。(特に日本は、議論や討論をすること自体が和を乱すとされて敬遠されるから、煮詰まった後は基本的に力による対立しかなくなる。これには無論集団差別である村八分的なもの総てが含まれる)この点に気付いて議論や討論の方向に舵を切ることができるか否か、ここが、分かれ目・分水嶺である。これができない者は、結局愚かの誹りを免れまいが、では、例えば今作のような具体的な事件に巻き込まれた人物の心情は、これで収まるのか? という実に難しい問題が矢張りいつでも鎌首を擡げてくる所に、単に愚か者と呼ぶことを躊躇させる心の問題があるのだ。今作は、そのような極めて実存的な問題をも提起している。
     おっと、書き忘れる所であったが、リリスが憂鬱を抱えるのが、この男の闘争の論理であることは言を俟たない。彼女は、何とか争いの無い世界を実現したいのだ。そしてその為には、皆が互いを尊重し合い、対立が在る場合には、議論を尽くして妥協点を見出す知恵を実践する他やはり無いのだ、ということをも表しているのは、今作のタイトルからも明らかである。

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    2019/10/12 19:00

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  • 翠野 桃さま
     ブログ拝読致しました。
    本当にお疲れさまでした。自分は35年ほど前に
    西表島で瞬間最大風速78mというのに出会っていて
    この時は、幹の太さが30㎝程の樹木がバキバキ折れ、
    全半壊した家屋も多く、台風の真っ最中は戸や窓も
    一切開けられず仲間の男2人と徹夜で家を守りました。
     水産高校出身なので、自然災害の凄まじさ、
    自然の優しさ何れも体験してきましたが、今回の
    19号は、東京の台風慣れしていない人々の多いエリアを
    襲う事、雨・風何れも強いこと、看板等が多く、屋根瓦
    などが飛ばされる危険もあり、電柱や電線がダメージを受ける
    危険性と河川の氾濫も注意しなければならないので、可也心配
    でした。殊に現在自分の住居は川から直線距離で250mくらい、
    1階なので浸水したら本が全部やられる、というのが一番心配でしたが、
    幸い川の水量は心配したほど増さずに済み、雨風の止んだ1時半頃には綺麗な
    月がみえました。今回の台風が中々弱まらなかった主因が海水温の高さでしょう。
    温暖化の原因は色々あって一概には言えませんが、人間がエネルギーの無駄遣いを
    していることはその一因でしょう。殊に原発は酷い。100万KW級原発1基が稼働すると1秒間に70tの水の温度を7℃上げます。停止していても核物質は崩壊熱を出し続けるので
    冷却し続ける必要があり、全面停止は出来ないのが原発で、核廃棄物の最終処分は、時間に任せるしかありません、因みにU238(劣化ウラン弾に使用)の半減期は44億7000万年。原発燃料として用いられるU235の半減期は7億400万年という途方もない時間です。現在まで70年以上に亘って核物質の持つ悪影響を無害化しようとの研究が世界中で続けられてきましたが、成功例は1つもありません。更にUを燃やしてしまうと核廃棄物・死の灰が生まれますが、その一つであるプルトニウムの毒性は、体内に取り込まれた場合ウランより遥かに高いと考えられています。大分脱線しましたね。何れにせよ、原発は最悪の選択です。
                                     ハンダラ 拝

    2019/10/18 18:50

    ハンダラ様
    この度もご来場有難うございました。
    ご感想、大変有り難いです。
    団体として邁進していきます。
    台風でしたが、全公演決行いたしました。
    詳細はブログに綴りました。
    https://ameblo.jp/momorin27/entry-12535977102.html
    御覧頂ければ幸いです。
    いつも誠に有難うございます。
    翠野桃

    2019/10/18 17:25

    皆さま
     台風大丈夫ですか?
    少しだけ追記しておきました。
             ハンダラ 拝

    2019/10/12 22:06

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