ワーニャ伯父さん 公演情報 都市雄classicS「ワーニャ伯父さん」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    アトリエ春風舎で時に遭遇する才能の萌芽(いや既に練達の域?)。端的に面白かった。
    ワーニャ役を演じる事になったうつ患者がだけが部屋着状態で、他はエンジ色の白衣(色付きでも白衣と言うらしい)をまとった医療スタッフ。このうち体型・髪型の似た女優2名の固体識別に時間を要し、また役の掛け持ちもあり、声量の加減も様々であるので今何が起きているのか分からない時間が結構ある(体調によってはそこで睡魔が襲う)。だから一度戯曲をおさらいして観るのが理想なのだろうが、前知識がなくとも見られる。で、きっと面白い。舞台には病院の時間が流れており、その枠組の外から透かし見る「ワーニャ」は、本題ではあるが形として本題でないという構造であるので、見れただけお得というやつ。さらに終盤では本域の芝居に浸かることが出来る。
    うつ病患者の風情がよく出来ている。最初、劇をやってみようという構えから読みが始まり、やがて役になり切ったかにも見えるが、後半、暫くワーニャが登場しない場面では上手奥で他の役者が喋っている間、何やらロープを持って来て天井に掛けようとして諦めたり、水を張った洗面器を持ち込んで顔を突っ込んだ所を看護師に止められたり、どこからかナイフを手に入れ腕をまくった所で看護師に止められたり・・笑えないがコメディである。
    演技エリアはほぼ上手奥のベッドとその周辺。舞台手前には来ない。他の役も同じくだが、役者自身と劇中の役との微妙な距離がキープされる。この「距離」があるからこそ、飲み込み易い青汁の如く、伝わってくるものがあり、作品の巧みな媒介のあり方が探られていた。笑える美味しい場面が多々ある。役者も柔軟に機敏によく演じていた。

    役者と役との距離は、観客と役との距離を縮める、という仮説を立ててみると、「現代のどこかの病院での上演」という設定はチェーホフの時代との時間的距離の縮め、我々に近づけている。ベッド上で語る終幕前のソーニャの台詞が隣りに佇むワーニャ役の患者の中に沁み込んで行く様を、自分の事のように眺めていた。

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    2019/10/07 14:00

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