体温 公演情報 白米少女「体温」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    ごくありふれた日常の中にある、ほのかな温かさ。
    心の中に残り続ける傑作。
    以下ネタバレBOXにて。

    ネタバレBOX

    観劇のきっかけは毎度おなじみTwitter。
    TLに流れてきた情報では、会話劇ということくらいしか
    分からなかったが、主宰である、やないさきさんのお言葉に
    熱量を感じて、観劇させていただくことにした。

    結論から言えば、とても良かった。
    ただ、それを「どう良かった」のか表現するとなると、これが
    また難しい。
    そもそも「良かった」という表現すら、適切かどうかがちょっと
    怪しい。

    面白い、楽しい、素晴らしい、素敵、感動などなど…
    観劇後の自身の心情を表してみようと、色々な単語を頭に浮かべるが、
    どれもしっくりこない。
    強いていえば、やはり「良かった」が一番近いような気がする。

    率直に言えば、この演劇については、自分の中でまだ整理しきれて
    いない部分も多々あって、そういうものがすべて解消されてから、
    感想を書こうかとも思ったのだけれど、白米少女の皆様へのお礼も
    兼ねて、まずは今の時点での感想を書かせていただこうと思った。

    白米少女さんの紹介分を改めて読んでみると、こんな一文がある。
    「いつだってしょうじきに、ひたむきに、誰かのにちじょうに
    寄り添う、絵本のような存在でありたい」

    これを読んで、少し腑に落ち始めてきたような気がした。
    そう、絵本を読んだ時の感覚。
    それに近いのだと思った。
    あたたかくて、ほっこりするような。
    漢字やカタカナではなく、ひらがなのみで表現できるような
    そんなふんわりとした世界。

    とはいえ、物語としては、童話でもファンタジーでもない。
    ごくありふれた人たちの、ありふれた日常。
    モノローグで紡がれる、彼らの心中もまた、ごくありふれては
    いるが、無意識に展開される自身の日常を代弁された部分もあり、
    個人的には、今の時分にまさに重なる部分もあってハッとなる
    場面も少なからずあった。

    「体温」というフレーズは劇中の終盤でようやく登場するが、
    振り返ってみれば、この演劇においては、象徴的なフレーズで
    あるような気がする。

    体温というのは、インフルエンザとかに罹ったのでなければ、
    そもそもあまり意識することはない。
    けれど、自分で自分の身体に触れてみればわかることだが、
    そこにははっきりと体感できるだけの温度というものがある。

    当たり前のようにそこに存在しているので、気づきにくいが、
    確かにそこにあるもの。

    そう思った時に、この演劇の懐の深さがじわりじわりと染み
    入ってくる。

    ありふれた登場人物たちの日常。
    あまりにも日常的過ぎて意識下にない「体温」は、彼ら自身も
    含めて、周りを取り巻く人々にも確実にある。
    そう思うと、劇中の彼らのみならず、自身の日常にもまた、
    あらゆる体温を感じるような気がしてくる。
    忘れていた何か、というか、常にそこにある存在というものを
    改めて認識することができた気がする。

    演出的な面でいえば、照明の演出が本当に素晴らしかった。
    他の演劇同様、場面に応じて、照明の効果は変化していくが、
    その切り替えの仕方が非常に自然で繊細で、実のところ、中盤
    まで照明のその変化に気づくこともなかった。

    舞台演出として、間違いなく機能しているのに、さながら体温の
    ごとく、それを意識させることなく、存在させたその演出は、
    素人の私にとっては驚愕だったし、素晴らしいと思った。

    大きな感情のうねりを伴うような演劇ではない。
    号泣することも、爆笑することもなかった。
    けれど、まさに日常レベルで、私は軽く涙腺を緩ませ、
    そして、微笑んでいた(自分でいうと変な感じ)。

    ここまで書いても、まだ心の整理はつかないが、それでも、
    間違いなく、私の中には、静かに、でも、きっと死ぬまで
    ずっと残る作品だと思う。

    私の日常が、月も隠れる曇天の夜に入った時、この作品を
    思い出すことで、朧に浮かぶ月を見つけられるような気がする。

    素晴らしい作品に出会えた。
    関係者の皆様、キャストの皆様、素晴らしい舞台を本当に
    ありがとうございました。

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    2019/10/06 18:22

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