蛍咲く杜で刻まれぬ時を 公演情報 法政大学Ⅰ部演劇研究会「蛍咲く杜で刻まれぬ時を」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     もっと早くから観るんだった!(華5つ☆)必見作品であった!!

    ネタバレBOX

     ヒトと同じ姿だが、幻術を用いることのできる蛍達は謂わば忍びの社会に於ける下忍のように、闇に乗じて依頼された殺人、暗殺などに携わっていた。無論、忍びの里が隠れ里に在ったように彼らの住処も人里離れた場所にあった。彼らが通常用いる武器はクナイである。刀を用いる者が無い訳ではないが、少数派だ。
     物語りは、ヒトと蛍の、そして蛍の心臓とヒトの死体を基にヒトに創られた人造人間と蛍との、或いは蛍相互の恋を軸に描かれる。ただ主要な登場人物や蛍の面々が抱える宿痾のような宿命からは誰一人逃れることが出来ず、その宿命に、命と念が引き裂かれ、鬩ぎ合い、縺れ、悲痛な哀切の奔流となって観客の胸を抉る。途中10分の休憩を挟んで約3時間の大作だが、一瞬たりとも緩みが無い。脚本は本質的で深く、而もドラマツルギーに満ち、象徴的に用いられる色彩のイマージュや個々の物(桜の古木、桃色、心臓と血、死と生と恋、永遠と瞬間、生の温かみと暖色、更に少し異色だが極めて気懸りな憧れへの強く直向きな傾斜等。これらの形象の相互連関とこれらのイマージュ総体が表す全体としての共通イマージュへの誘い等も見事である)同時に作家は、これらのイマージュと物語の過不足のない連携も成就させている。
     役者陣の演技、殺陣、演出、照明、音響効果も良い。殺陣の多い舞台なので、舞台美術はシンプルだが、出捌け口も多く而も平台を重ねた正面奥が障子になっているので、ヒロイン・彩の哀しい宿命としての座敷牢的空間を際立たせたり、二幕ではどんな願いも叶えてはくれるが、大きな犠牲も要求する桜の古木をあしらうなど物語内容と美術効果が実に上手くマッチしている。このマッチングの良さは音響・照明にも各効果相互の的確な連携にも見事な照応をみせた。見事である。

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    2019/10/02 03:16

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