満足度★★★
鑑賞日2019/09/16 (月) 13:00
座席3階A列21番
「愛と哀しみのシャーロックホームズ」って、何が「愛と哀しみ」なんだろうという素朴な疑問。端的に「シャーロック」とか「シャーロックホームズ」なんて題名にしたら、観劇に来る人それぞれに、内容をイメージしてしまいかねないので重しとしての冠なのだろうけれど、何か取ってつけたよう。
内容については、すでに皆さまお書きになっている通りで、正直、推理譚としてみても、ホームズ話としてもどうも物足りない。最初の犯人当てクイズから、なぜ求職した女性が20キロ太るように求められたのか、スコーンを誰が盗んだのか、ランタンゲームの顛末、そして最後のワトソンの計画。うーん、どこに「愛と哀しみ」が、、、、
ただ、俳優陣の健闘振りは賞賛もので、特に横田栄司のマイクロフトがよい。シャーロックの兄の登場となると、従来であればちょっと唐突感や人物造形に気がいって、物語に慣れるのに時間がかかっただろう。しかし、ベネディクト・カンバーバッチ版の「シャーロック」で、十分にマイクロフトの予備学習を積んだ、現在の我々は、あの嫌味で鼻持ちならず、かつ上から目線の彼を、すんなりと受け入れてみせた。登場シーンの滑稽さから、ラストの秘密のお楽しみまで、そのセリフ1つ1つに凝縮されたマイクロフト節を、横田栄司が大仰
なセリフ回しで見ごとに演じ切っている。新国立や彩の国で古典を演じ切る彼とは、全く異なる味わいがとても楽しい。
広瀬アリスも、テレビで観るようなあざとさがなく、コメディエンヌと擦れからし、そして可愛い女性の顔が、スッとこちらに入ってくる。八木亜希子もどんどん芝居が上手くなっているようだし、はいだしょうこの軽妙さも安定感が高い。女性陣の健闘が光る。
ただ、佐藤二朗は少し窮屈そう。福田雄一の元で良くも悪くも天衣無縫、好き勝手やっている感じはなく、三谷幸喜的な枠の中での芝居が求められているのがよく判る。
だから、前半の小心者のワトソン、後半のシリアスなワトソン、どちらも戸惑いが感じられて、カーテンコールで見せる弾け方もちょっと照れが入っている。これからこなれていくことに期待したい。
ホームズ好き、ミステリー好きにはお勧めしないが、好きな役者がいる、とにかく楽しい舞台を見たいという方にはお勧め。