この頭の底からこぼれ出るムラサキ 公演情報 サッピナイ「この頭の底からこぼれ出るムラサキ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     取り敢えず評価だけ。追記2019.9.17

    ネタバレBOX

     若手小説家同士が同棲している。同棲し始めたのは、ある小説の好みが同じだった為だ。男は新人賞を獲った後パッとせず、担当編集者からも彼女の方が期待されている。それでも彼女の方から何とかもう少し見てやってくれとのたっての頼みもあり、彼、未だ見捨てられてはいない。今作にはシュレディンガーの猫が挿入されて実にお洒落な使われ方をしているが、作中に出てくるシュレディンガーの猫の話は既に人口に膾炙しているとはいえ、未だこの量子力学に於ける論争が市民権を得ているかというと微妙かも知れないので少し説明をしておこう。実はこのことを小説中に取り込んだ作品こそ、彼らをこのような関係に導いたのであるし。
    元々量子力学の話だからミクロレベルで原子の構成要素や分子構造が問題になるから原子物理学や素粒子に関わりのある話である。要はミクロの量子の状態の変化とマクロ世界からの観測を如何に考えるか? の問題で実験としては密閉した空間に生きた猫を入れ、原子核崩壊の際にα線を出す物質を同時に入れておき、α線が出ると密閉空間に設置してある毒ガス噴射装置が機能するようにしておく。実験開始に当たっては容器の蓋を閉じて内部が見えない状態である。原子核崩壊が何時起るかは確率的問題と考えられ観測者は内部に閉じ込められた猫の生死を確率的にしか評価できない。一方、蓋を開けてみれば、猫は毒ガスを浴びて死んでいるか、浴びずに生きているかのどちらかになるだろう。だが、蓋を締め切った状態の時、猫は生きているのか死んでいるのか? それが、問いだ。
    因みに照明装置や照明の色に関してもかなり敏感な作品である。意識したか否かは兎も角、原発等の臨界で観測できるチェレンコフ光(チェレンコフ光とは、荷電した電子が例えば水の中を光より早く動く場合に発する青い光のこと)のようなブルー、彼女の好きな緑の光を用いた室内ライト、更にはタイトルにも入っているちょっと特殊な色目、紫も無論用いられる。ここで少し色というものの性質についても説明しておく。ある物質が色を示すということは、物質に白色光を当てた時、物質はその中から特定のスペクトルを吸収、離さなくなる。すると我々の視覚に色として認識されるのは、物質に吸収されなかった補色関係にあるスペクトルである。紫の補色は波長560nm~580nmの黄緑。この黄緑が 物質に吸収される結果我々の目に映ずるのが補色の紫という訳だ。
    そろそろ、作品解説に移ろう。男女の微妙な関係それを構成する空気を上手に描き乍らシュレディンガーの猫の生と死の重なり合いと大切な者を失ったが故の非在の現存というパラドクスに重ねた物語だ。このパラドクスに解が未だ見当たらないことの恐ろしさを含め“恐怖”というコンセプトを上手く織り込んで面白い作品に仕上げている。ファーストシーンとラストシーンの効果的な交感も中々洒落た内容である。 

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    2019/09/16 12:08

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  • 関原さま、皆さま
    ハンダラです。遅くなりましたがアップしておきました。
    ご笑覧下さい。
                         机下

    2019/09/17 15:38

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