おへその不在 公演情報 マチルダアパルトマン「おへその不在」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    虚構的な物語だが、どこか現実味を思わせる独特な世界観が魅力な公演。産まれてしまえば、へその存在など大したことではないが、無いと何となく変な感覚に囚われる。物語はこの へその有無を心の在りようの比喩(チャップリン言の悲劇であり喜劇)とし、ミステリアスな展開と軽妙洒脱な描き、その絶妙なバランスが観客を惹きつける。
    舞台美術はどこかファンタジーさを思わせ、反面、機能的な面を兼ね備えた見事な作り。それが物語の雰囲気を支えている。
    (上演時間1時間30分) 2019.9.13追記

    ネタバレBOX

    セットは飾り棚を思わせる仕切り壁、中央に応接セットが置かれ、物語の中心となる3姉妹の家であり、この姉妹が住んでいる町にある和菓子屋や煎餅屋を思わせる。飾り棚には何台かの電話が置かれたり、カメラが吊るされている。これって探偵業に必要なもの。そして大型のゴミ箱が下手側に置かれている。

    公演はリアル・ファンタジーといった独特の世界観…この不思議な雰囲気をどう表現するか。またマンガキャラが劇中内に入り込み、ある種のパロディを意図しているようだ。物語は、3姉妹それぞれが関わっている人物との相関関係を縦軸にし、探偵の行動から明らかになる出来事を横軸にし、人と出来事が錯綜するような構成である。そこに奇妙、奇抜な仕掛けを用意している。
    3姉妹、長女・たまこ は結婚したが夫は生死不明の未亡人状態、次女・のりこ は近所の和菓子屋の店員、三女・まるこは高校生という設定。この3人に対し煎餅屋の猫田家(夫人、息子)が絡んで騒動が…。また和菓子店(実際は牡丹餅メイン)の奇妙な存在、たまこの夫の消息と猫田家の関わり、まるこ と猫田家の息子の絡みなど次々と物語の引き出しが開けられ、物語は断続的に繋がっていく面白さ。

    マンガキャラというのは、少なくとも 三女まるこ と親友で和菓子屋の娘・あずみのこと。おっとりとした性格のまるこ、防備的に短剣を取り出す あずみは、それぞれ有名な漫画の主人公を連想させ楽しませる。そして牡丹餅に掛けて、半殺し(粒が残る程度に粗くつぶす)にするという乱暴な台詞。また鎖での拘束シーン、パペットの利用、ゴミ箱への潜入など奇抜な観せ方で観客の興味を惹くという巧みさ。

    この公演は、現実にある浮気や不正問題を仮想的世界に落とし込む、もしくは仮想世界に現実のいくつかの出来事を散りばめたような歪で不整合な世界観、理屈で説明しきれないところが魅力的だ。だからこそ、自分の現実として観れば悲劇であり、少し引いた立場の第三者が観れば喜劇(他人事)なのだろうか。
    こじつけであるが ”おへその不在”は、自分では気になるが、他人にしてみれば気にもしない卑小なことかもしれない。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/09/08 01:35

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