夏休みの友たち 公演情報 ハグハグ共和国「夏休みの友たち」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    人生は長いようで短く、短いようで長い。人生における幸せとは、日常の身近なところにあるような。人生は楽しいことばかりではなく、辛く哀しいこともある。その思いを忘れるため、無意識に思い出を閉じ込め記憶から消し去ってしまう。本公演では40年の時を経て、小学6年生当時の自分と邂逅し、忘れてしまった記憶と向き合い、これからの人生を今まで以上に大切に生きて行こうとするヒューマンドラマ。

    デジャ-ビュと言いながら山道を登る12歳の小学生と52歳になった中年期のメンバー、過去と現在を往還しながら物語は楽しく展開する。その夏の思い出が、ある出来事(災害)によって記憶を忘却へ。しかしそこから抜け出せない自分、それを夏休みの宿題ノート「夏休みの友」の空白ページを書き、描き埋めることによって今を見つめ直す。ラスト、水月(生粋万鈴サン)が呼びかける…「麓の皆さん見えていますか、こちらからは見えていますよ!」は、生ある人々への見守りのようである。同時に40年前の思い出も大切にしてほしいとの願いであり、まだまだ精一杯生きてほしい、という応援メッセージでもある。舞台となる山小屋「犬井」に咲く露草の話を比喩とするところは上手い。

    劇中に頻繁に登場する木霊(葉を付けた衣装)のダンスは、ハグハグ共和国らしい、優しく温かさが溢れており、山霊による見守りをイメージさせる。舞台技術、特に音響(劇中歌も含め)は実に効果的で余韻付けが上手い。自分は、このような芝居が大好きである。
    (上演時間1時間40分) 

    ネタバレBOX

    セットは、上手に山小屋「犬井」の建物と東屋のようなものが建つ。下手が山小屋前のちょっとした広場。その後ろが崖をイメージし上部に展望台がある。上手と下手の間に斜めに山道がある。今回もハグハグ共和国の公演で見られる客席側への張り出しスペース、そして客席通路を使用する登場シーン。

    物語は、麓の小学生と山間部の小学生の40年前の交流、その時に起こった災害で止まったままの夏休みの宿題を行う。宿題とは記憶というか心に負った傷を思い起こし、52歳になった今を見つめ、さらにこれからの人生を前向きに生きること。いわば心の再生物語である。12歳と52歳の1役2人の時代間隔、年代の往還を例えば、山道を登るときの地図とスマホの違い、無線機と携帯電話等、アナログとデジタルといった機器で表す。もちろん年代によって役者が違うから一目瞭然であるが、小道具にも拘りが見える。
    さて52歳の自分は、公務員であり、専業主婦、パート勤務、酒場での演歌歌手でありそのマネージャー。自嘲気味に自己紹介するシーンと、12歳の時に山間部の子供と交流しているときに漏らす悩みと重ね合わせる巧みな演出。楽しい夏の思い出が一変したのが噴火災害。この事故で山間部の子供たちは亡くなり...。いつしかこの辛い思い出に蓋をし忘却の彼方へ。人の死は、亡くなった人を忘れてしまった時が本当の死だ、と聞いたことがある。その意味で生きている人には辛いことであるが、それでも事実思い出に向き合い、これからを生きる。

    東屋での露草の話。露草は二つの苞の間から青色の花が咲くが、早朝に咲き出して、午後にはしぼんでしまう。そして3枚の花びらのうち2枚が大きい。残りの1枚は小さな白い色で見えにくいが咲いている。人の命は長くもあり短くもあるが、死者も生者の思い出の中で生きている。台詞にあったかどうか忘れたが、花言葉は「変わらぬ思い」「懐かしい関係」だそうだ。

    舞台技術の音響は情景・場景を浮き上がらせ、劇中音楽は口ずさむことができる懐かしいもの。そう思えるのは自分の年齢ゆえか。同時にオリジナル曲で余韻を残す。演技は素晴らしいの一言。
    最後に、山小屋の住人が一夜にして老婆に変貌する場面は、上田秋成の読本「雨月物語」の一遍「浅茅が宿」を連想する。当たり前の日常と無常の対比を思わせる格調の高さ。もちろん読本と状況・情況は異なるが、情念のようなものを感じるのだが…。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/08/30 18:22

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  • 生粋万鈴 様

    コメントありがとうございます。
    そして公演お疲れ様でした。

    自分こそ癒されるような芝居を観ることが出来て嬉しいです。ハグハグ共和国の公演は何度か観させていただいておりますが、どの作品も底流には人の優しさ悲しさといった心情が描かれていると思います。「夏休みの友たち」にもそれがしっかり描かれており、自分は大好きです。

    今後も出来得る限り観させていただきたいと思っております。
    こちらこそよろしくお願いいたします。

    2019/09/07 08:10

    タッキーさん

    コメント誠に有難うございます。
    これまでの2カ月間の稽古が報われるようです。
    ご観劇の感想や、選ばれているお言葉から、
    とても優しく癒されるほどの感慨を覚えております。
    ハグハグ共和国が、今作でお伝えしたかったことを、もしかしたら、全て受け止めて頂けたのではないか?そのように感じております。

    特に私個人としては
    【状況・情況は異なるが、情念のようなものを感じるのだが…。】の一文に鳥肌が立ちました。
    そこまで感じて頂けたことに、感服しかありません。
    役者の演技のみならず、音響効果へのお褒めのお言葉も、本当に有り難く感じます。

    頂いた素敵で畏れ多いほどの素敵なコメントに対して、このような乱文で申し訳ありません。
    今後ともハグハグ共和国をよろしくお願い申し上げます。

    2019/09/05 18:25

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