狂人と尼僧 公演情報 サイマル演劇団+コニエレニ「狂人と尼僧」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    サイマル演劇団二度目、赤井氏演出は三本目だったか。予想したテイストではあったが、今回は戯曲(作者)に興味がありそしてその期待には応える内容であった。
    客演陣にヒロインを演じた元唐組女優・赤松由美、同男優・気田睦と奇しくも共演となり、両者とも存在感あり。昨年横浜で「発見」した演劇集団・荒馬の旅の田村義明氏、怪優と呼ぶに相応しい葉月結子(恐らくサイマル関係)等役者ぶりを味わう快楽は保証付きという所であった。
    作品については、時代性を表わす幾つかの特徴と、戯曲に流れる「気分」を堪能したが、筋は部分的に見落とし、本来目指された戯曲の方向も掴みそこねた。それでもドラマの骨格から言葉から迫力は滲み、劇的瞬間がある。狂気がスタンダードである空気が好みであった。

    ネタバレBOX

    精神病者を収容する施設。医師からの指示を受けて若い尼僧がある独房の男を訪れる。男から何らかの兆候を引き出す目的らしかったが、彼は実はかつて尼僧が心震わせた詩を書いた詩人本人である事を知る。男はこの二三年「女」に渇えていた事を相手に告げ、女は彼に当初と全く異なる感情を抱く。やり取りの中で尼僧はいつしか男の拘束衣を解き、一夜の内に二つの肉体は結ばれ、二人は愛を確信する。男の様子(症状)が変わった事を喜んだのは尼僧を男にあてがう治療方法を提唱した精神分析医であり、束縛や禁止でなく人間的な干渉で人は変わる事の証明である(大意)と上気するが、やがて二人の男女関係は知られる所となる。施設を治める修道院の責任者(修道女)は件の尼僧を指弾し、男を狂人だと激しく罵る。若い二人は逃亡を企てるがその後すったもんだあって(忘却)、男は首を括る。女は狂乱し、刃物を振り回して施設の医師の一人がその犠牲となる。・・その後生き返った(死者として)詩人は喜ぶ女と連れ立って去り、今一人の死者は悪玉性が漂白されたキャラで蘇る(シュールさ極まれり)。このあたりの細部も忘却した。
    時代性を表わす要素として、宗教的妄信、新学説である精神分析学、狂人の定義に関する自己言及性などがあるが古さを感じさせず、作風としては科学的議論とオカルト要素が共存するシュールな世界がとりあえず初「ヴィトカッツィ」の印象となった。

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    2019/08/29 02:51

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