ゆらり獏 公演情報 不定深度3200「ゆらり獏」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     作・演の東野氏は理系の人だが、随分文化系の本質も理解してきているように思う。夢を語る際の役者達の独特の動きも凄く気に入った。(華5つ☆)2019.8.26 若干追記

    ネタバレBOX

     板奥に黒い衝立を立て、その上下が出捌け口になる。板上は縦長の木製机が中央奥に据えられ長辺は側壁と平行である。矢張り木製の椅子数脚。板は客席に近い部分が半円形に迫り出す形で、机・椅子は木目をそのまま活かした作り。その他は黒ベースで落ち着いた雰囲気を作り上げている。原案として用いられている漱石の「夢十夜」は、この希代の天才作家の面目躍如たる佳作だが、夢という不可解な現象を用いることによって、当時未だ人口に膾炙していなかった実存の根底に横たわる不可解と其処からマグマのように吹き出し続ける不安が人々にキチンと伝わるように書かれていることも今作の作・演出を手掛ける東野 航平氏が採用した原因であろう。無論現代に於いてはこの実存的不安は既に多くの人々に乗り越えられたと錯覚されるに至っている。人々は煌びやかな街明りの中に暮らしながら寒暖、飲料水、飢えなどに怯やかされることも無く利便性を享受しているように考えられている。少なくとも先進国中間層の人迄は。だが便利になった世の中で本当に起っていることは、人々の目に映りイメージされているように明るく清潔で経済的にも安定し快適なものだろうか? であれば何故、多くの若者が好きな人が出来ても結婚することも出来ず、将来を設計出来ずにいるのだろうか? 無論、現在海外に銀行口座を持っているような人は日本のコンビニに設置されたATMで日本円で金を下ろすことも安く簡単にできる。電信を使えば今でも数千円は掛かるだろうが。このようなことも実際大した手数料も掛からず、素早く、殆どいつでも簡単に出来ることは確かに便利である。然しながら利便性を享受するだけの人々が実際に今置かれている社会的位置から、熟練や高い技術を必要とせぬ低賃金単純労働者へ一方通行の転落をしないと誰に保障できよう。無論、背景には現在世界の銀行の多くで採用されている金融システム、信用創造システムの成長を強要される問題が横たわり、このシステムの故に例えば準備率10%とするとその10倍のバーチャル経済が少なくともマネーストックとして現実に機能し一旦不況ともなれば銀行の取り付け騒ぎが起こるということがある。現在西側先進国が量的緩和に踏み切り、各国政府が借金漬けから抜け出せない根本的原因もここにあろう。

     何れにせよ天網にも例えることができるインターネットが光速で世界をネットワーク化し社会インフラとして機能している昨今、スマホを持ち歩くことは、常時GPSで所持者の位置情報、即ち行動情報を誰かに監視され得るということであり、人々は嬉々として自らの行動情報を垂れ流している事になる。様々なSNSだって個人情報が誰かに盗まれ利用される危険は常に付きまとっているのである。(これらの情報を個人情報として用いずとも企業は社会の動向を瞬時に正確に知ることが出来る為、何を何時どの程度生産し、何時、何処に下ろせば利潤を大きくし得るかのデータベースとして用いることができる。無論、嘘や偽情報等も在り得るからその辺りは係数化し修正すればよかろう)さて少し先程の話題、一方通行で低賃金単純労働者とされてしまう現代社会の解明に戻ろう。社会が大金持ちと貧乏人の2極になったということは良く言われるし、実感している方々も多かろう。これはどうして可能になったのか? 企業が利潤を追求することは誰もが認める所だろう。当然のこと乍ら各企業は最小の投資で最大の利益を確保しようとする。而も彼らは既に利潤を最大化する為に生産手段の改良だけに頼る必要が無い。何となれば労働コストを下げれは利潤率は高まるからである。先進国の労働者は賃金が高いから彼らを馘首し、代わりにIT技術の発達した現在ではその利用で少しノウハウを教えるだけで誰でも生産性を維持できるとしたら、労働コストのパーセンテージを同じにしたまま、労働単価の安い労働者に代えることによって例えば先進国の労働者が10$の時給で働いている時、途上国の人が1$の時給で雇えれば1人分の労賃で10人雇えることになる。生産性が10倍にはならなくとも数倍になったとすると企業の儲けは遥かに増えるわけだから利潤を追求することが企業の第1目標である限り、企業はこのような合理性に基づいて経営戦略を立て、実現するのが必然である。これが世界中で起っていることなのではないか? このような流れの中で勝ち残ろうとするなら、自らパラダイムシフトを起こせるような技術の開発者となって成功したり、起業して成功者となる他、中々具体的な案すら思いつかないのではなかろうか? 無論、新たな金融システムを立ち上げ、成功させることができれば、これも一つの手ではある。然し生命の危険を伴うことは確実である。リンカーンやJFK暗殺の真の理由がこの辺りにあるとの情報もあるくらいだし、信憑性もありそうだからである。何れにせよ、行くも地獄、引くも地獄逃げ場は既に何処にも無い。自死を除いては。これが我らが生きる現在の実相であるとしたら。経済的レベルから大多数の人々の生命そのものが怯やかされる世の中は、とっくに始まり、只管更なる収奪の道をひた走っているのではないか? 一般民衆は良くて奴隷、悪ければそれ以下の生活を強いられる貧民と成り果てよう。このような未来像こそ、東野 航平氏が「夢十夜」という作品の語り口の違いに気をつけつつ、原案物語の順序を変え、内容を編集、オリジナル要素も加えて現代の物語として再生している所以だと思われる。無論、明治時代を生きた漱石の感じていた実存の根底に蟠る存在の不安とも、それは、そのまま地続きである。
     おっと、余りに当たり前過ぎて書き忘れる所であった。歴史的に大量雇用を伴ってきた先進国の重厚長大産業は、既に国際競争力を持たない。彼らの持つ技術力でおいしく稼げるのは、軍需だけである。だからどんな手を使っても兵器を作り国外にも販路を伸ばして企業として儲けを出し存続し続けたい。だが我が国の場合、国内の販路は自衛隊だけ、基本的に言い値で買ってくれるから極めておいしい商売だ。然し市場が小さすぎる。どうしても輸出したいが、スペックとコストパフォーマンスは評価されても、命の掛かる戦場での実戦戦闘実績が皆無だから買って貰えない。そこで憲法改悪が画策される。当然、政権はその目論見を実現する為の駒で利益共同体である。歴史的にその国の社会を支えてきた重厚長大産業であるから利害関係のある支配層も多く、金融機関も彼らのグループに属して甘い汁を吸ってきた。目的は唯一つ、儲けることである。彼らは自分達の既得権益を手放したいとは思わない。当然、民衆などいくら死のうが関係ない。自分達の利益確保の為には、ということで戦争をおっぱじめようとしているが、食い扶持を失い自らの頭脳を用いて状況判断をし得なかった者は貧困に喘いでいる訳だから兵役に就くしかない、というシナリオだ。こうはならないことを期待したいが。

    0

    2019/08/26 02:45

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大