アイランド 公演情報 イマシバシノアヤウサ「アイランド」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2019/08/25 (日) 18:00

    プレビューも含めると26公演の長丁場も残り3ステージとなった日、
    疲れを知らぬ鍛えられた声から、切なる咆哮が監獄島に響き渡った。
    凄まじいばかりの自由への渇望が、客席の自由ボケした私に降りかかる。
    アパルトヘイト下にあるアフリカで「アンチゴネ」を上演する意義、
    それも監獄にいる者が演じる意義の重さがビシビシ伝わって来る。
    人間のアヤウサを見せつける芝居に圧倒された1時間15分。

    ネタバレBOX

    客入れの時から、街角の雑踏のような音が流れている。
    後から思えば、これは囚人たちが焦がれて止まない“自由な空気”が奏でる音だ。
    舞台中央、一段高く粗末な木製の寝台らしいスペースがある。
    舞台の周囲を一面に囲むのは銀色のシート。
    奥の方から風を吹き込んでいるのか、ふわりと持ち上がるとシャリシャリ音がする。
    それは彼らの過酷な労働の現場である、灼熱の砂浜の音だった・・・。

    1991年まで続いた南アフリカのアパルトヘイト。
    身分証明書の携帯に反発してそれを燃やしたウィンストン(石橋徹郎)は
    終身刑を言い渡され、この監獄島に収監されている。
    囚人を精神的に追い詰める単純な苦役を強いられる日々、
    救いは同室のジョン(浅野雅博)とのたわいない会話。
    ところがある日、ジョンの刑期が短縮され、あと3か月で出られることになる。
    弁護士の嘆願書が功を奏したのだという。
    興奮して眠れないジョン、激しい葛藤に悩まされるウィンストン。
    やがて刑務所内の演芸会で、二人は芝居をすることになる。
    「法」と「生きる意味」をかけて渾身の「アンチゴネ」が幕を開ける・・・。

    理不尽な制度に立ち向かう怒りと無力感。
    行き場を失くした怒涛の感情がほとばしる「アンチゴネ」だった。
    ウィンストンが最初に衣装を着けた時、ゴツイ男のアンチゴネ姿に
    私も思わず笑ってしまった。
    だが演芸会本番の時は、もう笑うどころではなかった。
    人間の尊厳を踏みにじる「法」を敢えて破り、
    「私は有罪だ」と胸を張るアンチゴネは、もはやギリシア神話の高貴な娘ではない。
    肌の色で人間を差別する、いや世界の全ての差別に対するアフリカの問いかけだ。
    「法」とは何か?
    「生きる」とは何か?
    「芝居」とは何か?
    「絶望」とは何か・・・?

    ラスト、二人が足枷で繋がれながら走るシーンが、
    こんなものに潰されてなるものかという、
    人間の誇りを象徴しているように見えた。


    0

    2019/08/25 00:10

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大