発表せよ!大本営! 公演情報 Aga-risk Entertainment「発表せよ!大本営!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    アガリスクエンターテイメント『発表せよ!大本営!』

    日本海軍が大敗したミッドウェー海戦。それをどう伝えようかと苦悩する大本営海軍報道部の、ドタバタコメディ(!)。

    こういうコメディを得意としているアガリスク。このテーマと聞いて「おっ!」と思った。
    討論&会議&落としどころを探り出す演劇にはうってつけのテーマだから。


    (ネタバレに長々書いてます)

    ネタバレBOX

    オープニングは1944年。
    彼我の戦果と損害について、発表と実際を一覧にする。その差があまりにも大きすぎて「一体どうしてこんなことに……」からスタートする。
    その原点ともいうべきところがミッドウェー海戦にあるのでは、ということなのだ。上手いよね。

    歴史や戦史マニアの方たちには厳しいものがあるかもしれないが、何も知らない若者たちには、いろいろ考えさせるというインパクトはあるようだ。

    当日配布するペーパーには、「大本営」はもとよりいろいろな基本用語の解説もある。
    ただし主宰の言葉を借りると「歴史はそれほど知らなくても大丈夫です。ただ日本が負けたことだけは押さえて見てください」とのこと。

    ミッドウェー海戦の大敗と、その戦果の事実を曲げて発表した大本営という史実は動かせないので、そこがスタートであり、決着点。

    アガリスクらしいテンポの良い会話と、場面の切り替え。
    気持ちいいほどどんどん進んでいき、ラストの畳みかけはやっぱり上手い。笑いが多くとにかく面白い。

    戦果と損害の数字をどうにかしようとするのだから、「数字」なのだが(台詞にもあるが)、観客としてはそれは単なる数字でないことがわかるだけに、そういう台詞をさりげなく言わせたり、「数」に注目させたりというところがとてもブラックな上手さ。
    大本営にとっては「数」であり、そこに「人」はいない。

    さらに甘味処に代表され一般市民は「勝ち負け」のみしか気にしてない。勝って当たり前の日本軍だったし。

    そうした視点でしか見ていないのは、「歴史」となってしまった現在私たちの見方とも重なる。
    空母が沈めば大勢の人が死んでいるだ。

    そうしたものを内在しながらも、そこをみなまで言わないというセンスの良さ。

    「事実を自分たちの都合の良いようにねじ曲げて」がこの作品の表テーマであるとすれば、裏テーマは「人(命)」を「数」としか見ていない戦争の怖さであると思う。

    一般庶民のエピソードを単なる騙された国民として描いているのではなく、微妙に翻弄された人たちの、その微妙さの加減がいいのだ。声高じゃなくて静かに翻弄されるというか、さらりというところがアガリスクの上手さでもある。

    報道の者としての使命に燃える、新聞記者と放送員の2人。うまいこと説得されてしまうのだが、いわゆる「大本営発表」はこの後も続く。オープニングの「数字の差」にもあらわれている。
    今回黙ってしまった彼らはどうなったのだろうか。
    召集されて前線へ、などということもあり得そうだ。

    淺越さんがもっと屁理屈で責めてくるかと思ったのに(笑)。
    作戦課長の北川竜二さん&陸軍報道部の高木健さんはアガリスクにない、いい味。そして津和野 諒さん抑えた熱演。軍務局課長役の木内コギトさんが、とても上手いテンポの台詞。スパッと決まり気持ちいい。

    榎並夕起さんと熊谷有芳さんも、とっても良かった。
    で、結局あのゴミを集めていたおばさんって? 笑。

    アガリスクの俳優さんたちは、安定的な良さがある。見ていて安心。
    しかし、毎回思うのだが、全体的に前のめりになりすぎているのではないか。
    少し落ち着いてみたらどうだろうか。もちろん畳みかけるところは別にしても。
    ぐっと奥行きが出るような気がする。

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    2019/08/18 06:16

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