満足度★★★★★
「第二部」を観劇。休憩なしの115分
アフタートークはディスカッションとは銘打たれていたものの、作者の谷賢一さんが観客の質問に答えるものであった。原発そのものはテーマが重すぎるし、物語上はまだ事故は起こっていないので、ディスカッションは最初から無理であった。そういうわけで質問は、どう構想したのか、福島で公演して書き換えたところはあるのかなどの演劇論的なものが主体となった。まあそれはそれで面白かった。観客の皆さんの演劇の観方も分かるし。
そういう流れは公演本体を観た観客の自然な反応でもあったのだろう。もっと強烈な反原発論が展開されるのかと思いきや、町長個人の生きざまをある意味淡々と描くものだった。もちろん作者の主張は周りの政治家のうさん臭さや町長の悪魔風メイクに現れているし、愛犬モモの霊の言葉としても発せられる。だがしかしあまり煽りがないのだ。第三部で一気に煽ってくるのか、観てのお楽しみとしておこう。
谷さんはこの町長の変節ぶりを「荒唐無稽」と表現していたが、私はそこまでのメッセージを受け取ることができなかった。むしろ私がこの町長であったなら同じことをしたと思うのである。「権力側に立って原発の安全性を確保する」ことは実に魅力的な提案だ。またチェルノブイリ事故に対して「日本の原発は安全だ」というのも当時としては妥当な結論だった。別に脅されて嘘を発表したわけではない。もちろん漠然とした不安はあっただろうがそれを町長として発表するのは単なる無責任だ。
最後に蛇足を一つ。ミュージカルファンの私としてはモモのダンスにもう一つキレがあればなお良かった。まあしかし、キレッキレのプロのダンサー並みになると今度は白々しく感じるので抑えたのだとしておこう。もちろん百花亜希さんの演技そのものは非の打ちどころがない。(追記)側転だけは止めてほしいと思っていたら二回目にはなかった。まあ毎回アドリブなのだろう。