満足度★★★★★
鑑賞日2019/08/07 (水) 19:00
座席A列8番
1ヵ月近い、下北沢では本多劇場を除けば、稀なロングラン上演。ましてや、OFFOFFである。気合の入り様が違う。(まあ、集客や採算、役者の本業との兼ね合いなどで、ロングランしたくともできない劇団が多いのだが)
アイランドとは、南アフリカのアパルトヘイト下で、政治犯を収容した孤島を指す。過酷な強制労働が課せられ、生活環境も過酷だ。この舞台は、そこに送られた2人のカラードの物語である。
アソル・フガードの舞台を観るのは、2017年1月新国立劇場の「豚小屋」以来となるのだけれど、この「アイランド」を観て、アソル・フガードを調べるまで、彼の作品とは思いもよらなかった。第二次世界大戦時の脱走兵の話と南アフリカのアパルトヘイト下の話だから、共通点を見出せなかった。しかし、両作品とも自由への果てしなき渇望を描く2人芝居ということでは一致している。もちろん背景には、一方で戦争批判や社会主義体制批判、もう一方でアパルトヘイト批判があるのだけれど、むしろそこよりも、必死に現状に抗って、いつの日か自由を獲得しようとするバイタリティー・執念が大きく前面に出ていることも、同じテイストを持たせている。
劇中劇の「アンチゴネ」、自らは確かに罪を犯した(法に背いた)、しかし、私の行動は正しいと主張し、自らに過ちはないと主張するアンチゴネの姿は、アパルトヘイトに対する抗議行動をした、まさに2人の立場の代弁である。
この舞台で、終始通底している「アンチゴネ」と強制労働、2人の停滞なき生の象徴である。そこには諦観や絶望など、微塵のかけらも見られない。