下北ショーGEKI夏祭り公演2019 公演情報 ショーGEKI「下北ショーGEKI夏祭り公演2019」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    1人の女性の半生を漫画や小説の有名なフレーズ(太宰治の「大人とは、裏切られた青年の姿である」等)を借用しながら紡ぐ、まさしく笑劇にして衝撃的な公演。舞台上で使用する小道具は、漫画的な観せ方を意識した心憎い演出だ。笑いと涙は人生そのものを表わすが、この物語に登場する女性はと言えば...。
    (上演時間1時間50分)「漫画少女は眠らない」編

    ネタバレBOX

    舞台セットは、形の違う大小額縁のようなものが幾つも吊るされている。物語が始まるとそれが漫画コマ割のように観え、枠に登場人物が収まり現実と漫画の世界を行ったり来たりする。表面的にはポップで軽快な印象であるが、内容的にはとても深みのある公演だ。

    梗概…主人公・豊富エマ(廣田朱美サン)は昭和51(1976)年生まれで、物語は彼女が8歳の時から始まる。そして時代を順々に経て令和元(2019)年の43歳までを描く。その時代はエマが8歳、16歳、25歳、33際、43歳であるが、同時に母親・寧々(吉川亜州香サン)も登場し二人三脚のように寄り添って生きている。エマは「顔面緘黙」という病気で表情に乏しく、人とのコミュニケーションが苦手。だからいつも母親に後ろ盾になってもらっている。自分の本心を隠し魔法犬として母を女剣士として操る。その際、額縁に収まり照明の中でポーズを決める。その姿はまさしく漫画タッチで面白可笑しい演出である。

    観せ方は、映像的に言えばカメラアングルを変えるような感じで立体的に切り取る。例えば職場先輩で恋人の小野田とラブホテルでの光景など実に上手く表している。年代ごとの面白エピソードを散りばめながら、時々に印象的な台詞が聞かれる。自分は「言葉は刃、一度(口から)発したら取り戻せない」が心に響いた。

    高校時代(16歳)の部活と初恋、デザイナー(25歳)として働き、恋人が出来るが裏切られ、中年(33歳)に差し掛かり、母が亡くなった現在(43歳)は…。その時々に人や社会とのたたかいがあり、変身することで本心を隠し誤魔化しどうにか生きてきた。物語はマンガとも歩みを一緒にしている。そこにタイトル「漫画少女」に因んだ時代背景や漫画文化が透けて見える。

    エマという1人の女性の半生を通して、人が抱えているトラウマのような悩み、誰かに認められたいという自己承認といった諸々の感情を描く。幼い時、エマは父から自分の存在や愛情の拒否を受けたが、父は父で作家として認知されたいという悩みを抱えていた。2019年になった現在、万人に認められなくても、誰か1人でも認めてくれる人がいれば頑張れる。自己否定(顔面緘黙という病も含め)から自己承認されることで生きる力を得る、という否定⇒肯定へ帰結させるまでの経過と結末への導きは見事であった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/07/27 23:44

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