無伴奏~消えたチェリスト 公演情報 劇団東京イボンヌ「無伴奏~消えたチェリスト」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     ”消”を拝見。(華4つ☆)

    ネタバレBOX

     舞台美術のセンスが素晴らしい。板手前中央に置かれたテーブルの脇に置かれたベンチはハの字に広がったものだし、奥正面のガラス窓の奥には植え込みが広がり、其処を通る役者達の微妙な心理描写まで手に取るように分かるだけではない。上手奥に据えられたバーカウンターに付けられた椅子の足は座部下中央から四角錐状に延び、下部を円環が接合したお洒落なデザイン。更にこのカウンターに座った客らの姿がほぼ対角線上の壁に付けられた大き目の鏡に映り込む。出捌けは上下1箇所づつの計2箇所。これも変則対角線上に位置しているなど非常に優れたセンスを感じさせる。音楽に纏わる作品を上演する劇団だから、今回生演奏は入らないものの、良い選曲である。惜しむらくはヒロイン・貴子が演奏家という設定だろうか。この設定だと、結構型のできてしまったクラシック音楽演奏家の社会では、世界的演奏家になる為の階梯もハッキリしてしまう懸念があって、もっとアナーキーで、本質的に業界革命を起こせるような才能を描く際には人間の持つどろどろした世界をアウフヘーベンするような才能は描きにくいように思うのだ。プレシオジテなどの余計な要素が絡んでくれば、劇的な要素は阻害される。無論、優れた演奏家というものは、こちらに聴く耳と感性がありさえすれば、その才能の高さは可也早い時期に正確に評価することができよう。自分自身の経験では辻井 伸行氏が未だ中学の時から生演奏を2~3年聴いたことがあって、初めて聴いた時、その卓越した技術力、感性の豊かさと柔らかさ、リズム感、そして音楽というかピアノを弾くのが好きで好きで堪らないということが体全身から溢れているのを見、この子は世界的なピアニストになるだろう、と直感した。まあ、自分自身ガキの頃からハッピーエンド、シャープス&フラッツなど一流ミュージッシャンの音は生で聴いていたこともあるかも知れないし、友人に極めてアーティストが多いこともあるかも知れないが。
     何れにせよ、自分なら脚本をもう少し劇的になるように書く。例えば貴子の友人でフルート奏者を目指していた香苗との関係も同じチェリストのライバル同士にするとかにして葛藤や嫉妬など対立を中心に据えるだろうし、貴子が世界的チェリストとして成功していたのにチェロ迄止めると言い出した原因との葛藤をもう一つの軸に据えて物語を紡ぐ。演出も然りだ。
     役者陣については、役を演じるのではなく、更に技術、生存と哲学や思想を学んで役を生きて欲しい。

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    2019/07/19 13:30

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