アシュラ 公演情報 平熱43度「アシュラ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    「一人二役!」「小道具なし!」「転換スピード0秒!」このハイスピード演劇にアナタはついてこれるか!?...という謳い文句通りで心地良いテンポで観ることができた。一方、この謳い文句によって脚本の魅力が損なわれた面も観られ勿体なかった。
    ディストピアに一筋の光明が…。
    (上演時間2時間)【修チーム】

    ネタバレBOX

    セットは、舞台上部から観たら凸状で、客席に向かって突起し何か所かに白布が掛けられているだけ。ほぼ素舞台に近い作りはアクションスペースを確保すること、時間的空間の広がりをイメージさせるためだろう。小道具なしのパントマイムで状況・情況を表現する。また1人2役を演出するため、体を回転させるなどして場と人物をイメージ転換させる。その意味では「転換スピード0秒!」ということになる。

    梗概…いつの日か、某研究所から開発中の新種ウイルス“ASHURA virus-アシュラウイルス-”が漏れた。そのウイルスの名前は20歳未満に感染し、遺伝子を変化させ「超能力」を扱う。この超能力者となった”新生人種”が反政府組織としてテロ行為を行いだす。政府は、新生人種の抹殺を秘密裏に実行するという社会ドラマ。一方、この部隊に配属された男の使命と彼女の思念(妖怪サトリのような相手の心が分かる)の切なさが人間ドラマとして描かれる。

    1人2役は新生人種(子供時代)と旧人種(成長し抹殺組織)の間で行われるようで、謂わば、過去と現在の同一人物が殺し合う、もしくは過去と現在という異次元空間での闘争のように思える。その設定であれば大胆奇抜で面白いと思うが…。表層的には新旧の人種闘争で、アクション・超能力という見せ場でストーリーを牽引する。連続した時間上にある同一人物が殺し合ったらどうなるのか、または異次元間の闘争の果てはどうなるのか、といったことが解らない。なぜ新人種がテロ行為を行いだしたのか。設定の曖昧さが、ラストの女性の衝撃的な告白シーンの盛り上がりに繋がらない。謳い文句に捉われるあまり、脚本が伝えたかったことが おざなり になったように思える。

    脚本は20年以上前に書かれ、2013年に再演したという。自分は新種ウイルスが漏れたという設定に、2011.3.11東日本大震災後の原発事故を連想してしまう。新人種の得体のしれない超能力の脅威=放射能汚染、その取り組みが遅々として進まない現状。蓋をして隠蔽する、その様子を新旧人種間の確執のように描く、そんな暗喩的な公演に思える。暗澹たる世界観にあっても、足元にある人と人の信頼関係、恋愛感情を掬い上げ物語に織り込む。社会+人間ドラマとして観(魅)せているところに好感を持った。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/07/14 11:02

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