ストアハウスコレクション・日韓演劇週間Vol.7 公演情報 ストアハウス「ストアハウスコレクション・日韓演劇週間Vol.7」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    「魯迅の『狂人日記』を原テクストとした韓国・日本の2劇団による上演。両劇団の切り口・アプローチを見比べる」という謳い文句に対しては、韓国の「狂人日記」は、連続したモノローグ、日本の「今日人。明日狂。」は個人を取り囲んだ群衆、といった印象の劇。どちらも演劇的な身体表現は豊か、そして原テクスト「狂人日記」の言わんとしていることが分かる優れもの。
    (上演時間2時間30分 途中休憩含む)

    ネタバレBOX

    自分が観た回は日本「今日人。明日狂。」、韓国「狂人日記」という上演順。日本、韓国とも素舞台で、時にいくつかのキューブが用いられるのみ。印象的なのは、どちらも照明を駆使した演出、心象付けが素晴らしい。

    〇日本「今日人。明日狂。」DangerousBox(日本)薄暗くした雰囲気の中で、演者・ダンサーは基本的にモノトーンファッションに身を包み、全体を通して妖しく時に荒々しいパフォーマンスを繰り広げる。狂人日記の核と思えるところは、冒頭で表現され、以降それを説明するかのような展開である。円陣の中心に足を向け、仰向けに寝ている演者の真ん中に立ち姿の女性2人。この2人が裏表・上下に重なり捩じらせることであたかも1人の人間を立ち上がらせるようだ。自分の中にある正邪・建前と本音といった2面性のような、しかし、そんな単純には表現しきれないもどかしい根源的なものが観てとれる。「人食い」というフレーズは、ある人の意識下にある誇大妄想かもしれないが、もしかしたら誰もが持っている繊細な感情のようにも思える。小説の行間に込められた思い、それを生身の身体表現で”感性””として表しているところが上手い。

    〇韓国「狂人日記」 劇団新世界(韓国)
    個々人が持っている、少し偏執的な側面を狂人として強調する。1人ひとりの独白を基本に、それを連続させることでいつの間にかそれが普通なことと思わせる。日本とは逆に1人ひとりが個性豊かな衣装に身を包み、個々独自のスタイルで表現して行く。登場する狂人は、サムスン狂人、拘束狂人など9狂人であるが、その中に白ミニ姿の舞台狂人がいる。3番目に登場するが、出番が終わると舞台から消えるのが定めだが、黒いマントを羽織り闇に同化してでも舞台上に居続けたいと…。他人と違うことをことをすれば狂人扱いされる。狂人の思惟は、自己表現・主張が上手く出来ない自分自身への嫌悪や怒りかもしれない。その感覚表現は、狂人の偏執ぶりを可笑しみで包み、他人の目を意識し恐れた隠れ蓑のように思える。多数の中の個人という没個性こそが生き残れる、そんな社会への警鐘とも思える描き方。

    冒頭に記した「両劇団の切り口・アプローチを見比べる」は、どちらも「狂気」というものは、誰もが気付かないだけで、本当は自分の中(心もしくは頭)の奥深くにある、狂人と自分との境界線が曖昧に思えてくる。同時に個性より集団という社会性のようなものが優先される。何となく人間の意識下を描き同時に社会という構図への批判、そんな個性=個人、集団=国家が個々に浮き彫りになるような両公演であった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/07/11 23:57

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