満足度★★★★
鑑賞日2019/06/27 (木) 14:00
座席1列
聴の章」「橡の章」ぶっ通し上演を観劇。アフターイベントと休憩を含みの8時間。
会場は満員。開演1時間前までは、通路の邪魔になるからという理由で入口に並ばないようにお触れが出ていたけれど、ぴったり1時間目に着いた時には、すでに20人くらいの列が劇場脇に整理されてできていた。
「偏執狂短編集 第4.5回公演としたのは、第4回公演でミソがついて2公演上演できなかったことに対する劇団なりの意趣返しのような意味があるのだろう。
その分、今回の舞台のはじけっぷりは凄まじかった。そして8時間飽きない。(ただし、当然ながら少しお尻が痛い)
「千年狐狸精蘇妲己凌遅演義」
前回から上演延期になった、いわくつきの作品。古代中国の拷問、処刑の暗澹たる風景を、これでもかというエロ、グロと、ひきつるようなユーモアで描く。何しろ満員の劇場で、中盤にかかったところ、熱気で空調が良く効かなくなり、人肉食の場面では、ちょっと気分が悪くなった。(まあ、自己責任。でもやたらと脂汗が出たのにはまいったな)
大森さつきさんと鈴木大二郎さんの、はじけっぷりが凄い。
「魔女狩り処刑人PL」
ペンチでの爪剥ぎ、頭蓋骨粉砕機、苦悩の梨、振り子、のんだくれのマント、審問椅子、腸巻き取り機、スペイン式くすぐり器、貞操帯等々とにかく、これでもかという拷問の数々。
まさに、よくも作り上げたと思われる魔女狩りの地獄絵図。こちらは、人肉食や人体懐胎などあまりない分、色とりどりの絵巻物。視覚に強く訴えかける。
ところどころ、レベッカ役の川添美和さんのとぼけたような芝居に、笑いを誘われる。結果として妹や使用人を殺され、その挙句にPLからの質問に対して、彼女が最後に口にする一言が、さらなる悲劇を予見させて幕。ただ、審問官にも女性がいるのだけれど、彼女は対象外なのか?
PLことピエール役の山本恵太郎さんが、無慈悲な審問官として執拗な執念で異端者を作り上げていく様は、毎度の短編集での彼の見せ場ともいえる好演。
「向う側の世界―Missa―」「こちら側の世界―Sabbath―」
前者は、見てはいけないものに興味を持った男と、その好奇心を押し留めようとする女の物語。後者はストーリーがない、となっている。澁澤龍彦氏いわく、サバトの儀式は妄想とされるからかな。しかし、登場人物の構成から前者の続きと見えなくもない。
「こちら側の世界―Sabbath―」に出てくるピエールは、「魔女狩り処刑人PL」の審問官ピエールを想像させもし(両方とも、山本恵太郎さんが演じている)、彼が常軌の世界から足を踏み外す発端となるのは、このサバトの宴を目撃することに由来するともとれなくもない。
「アーサーシャウクロスは戦いたい」
出ました、アーサーシャウクロスです。すでに何度か同劇団では取り上げられている人物である。今回は幼少期の生活と、ベトナム戦争での生活をリンクさせながら、彼の精神構造を探る舞台となっている。
現在のアーサーを山口晃洋さんが演じ、子供時代のアーサーを酒井奈々夏さんが演じる。この子供時代の存在が、彼の嗜好・思考を理解させるために重要な要因となり、アーサーの人物像に厚みを加えている。性的虐待を受けるアーサー、母親に捨てられるアーサー、強くなりたいと必死に願うアーサー、自らが女性として成人時のア―サーに犯されるアーサー、そしてベトナム戦争犯罪の集会の隅にいる少年時のアーサ―。
彼は、ベトナムからの帰還後も、べトコンとの戦いを続ける。米兵相手の娼婦に扮したベトコンがいるという妄想から、娼婦を犯し殺し続けます。そして、アーサーが敬愛するカリ―中尉の一言に打ちのめされ、絶望の淵に落とされる。(ネタバレ)
「悪徳の栄え」
(ネタバレ)
ちなみに一昨日は、リオ・フェスで昭和精吾事務所の「水鏡譚」を観劇。身体と声で張り詰めるシンプルな舞台。通底するような淫猥さや漆黒な闇があるのだけれど、「偏執狂短編集」は、とにかく小道具の嵐。まあ、次から次へといろんなものが出てくる。生首、内臓、切り取られた腕や足、乳房から、先の拷問器具まで。ベテランの山本恵太郎さんらが仕切っているらしいのだけれど、舞台裏はどんな感じになっているのだろう。小道具を作るのも大変だけれど、整然と管理するのも大変。
それと女優の皆さん、結構露出が多いのだけれども、膝やお尻、太腿などに痣や擦り傷のようなものが見られた方が多いような気がしました。稽古が過酷?大変そうなのは推測できますが、千秋楽後は体を労わってあげてください。
さて、また第5回が楽しみだな。