暁の帝〜朱鳥の乱編〜 公演情報 Nemeton「暁の帝〜朱鳥の乱編〜」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    夜明け前、暁に光を照らすことを願った鸕野讃良(うののさらら)、後の持統天皇の苦難とそれを乗り越えていく姿を描いた叙事詩的公演。
    (上演時間2時間強)【藍チーム】

    ネタバレBOX

    セットは中央に斜めに傾いた円形台(八百屋舞台のよう)。表面は板を張り合わせた幾何学的文様のように見える。天井部には暖簾のような紗幕が吊るされ、舞台を前後する。上手・下手側に役者用の椅子が置かれ、舞台に登場しない場面では控えている。
    衣装は全員、黒作務衣・道着のような上下に色違いのマントを羽織っている。舞台美術、衣装等は何となく抽象的な感じを受ける。それは飛鳥時代、それも宮中という空間に現実感を持たせない工夫であろうか。

    物語は、壬申の乱に勝利し大海人皇子(おおあまのおうじ)が天武天皇として即位し、本作の主人公である鸕野讃良(うののさらら)も皇后となり天武天皇のサポートしている。そして後継者として、讃良は自らが産んだ草壁皇子を推したいが、知力・体力共に優れた大津皇子の存在があった。その大津皇子は後継者として認められたい一心から無理をし貴族たちの反感を買ってしまう。やがて、讃良の願い叶って草壁が次期天皇を約束されるが、天武天皇が病死する。それを機に大津皇子がクーデターを起こそうとし国は混乱していく。その渦中で鸕野讃良が自らの使命を果たすため帝になる決意をする。

    壬申の乱という歴史上の大事件後の世を描くことは難しい。大事件という不幸こそ劇的な物語になり、平時は物語にし難いかも。その意味で政治社会として盛り上がりに欠けるのはやむを得なく、どちらかと言えば人間ドラマとして展開させる必要がある。歴史学者でなければ詳しく知らない、飛鳥時代という歴史的事実の真が解りかねる背景、そして宮中というこれまた世間になじみ難い情況下で紡ぐ。だからこそ大胆に解釈しダイナミックに展開することが出来る。
    「三種の神器」のひとつである草薙剣は、天皇の”証”として描かれている。平穏を願う気持ちと剣を手放せない矛盾。その葛藤が草薙剣=呪いの剣と言わしめ、宮中らしい描きになっている。
    一方、人の感情...皇后として政治社会全般、今後の国運営を思う気持ちと母としての情愛の間に揺れる心。どちらにしてもきれいに描き過ぎで切迫感や母性愛が感じられないところが残念。

    本公演の魅力は、不詳のような時代背景、宮中事情を演劇的な想像力で紡ぐ。歴史教科書的な事実とその裏に隠れた真実…誰も知らない世界観を、こうなのではという仮定を上手く溶け込ませ物語を展開させている。本公演はその虚実綯い交ぜの大胆な解釈が魅力的なところ。時代・社会という巨視的感覚の描きは優れているが、そこで蠢く人間模様が表層的な描きで平凡過ぎる。中盤以降、単純な勧善懲悪的な展開で飛鳥時代と宮中という魅力的なバックボーンを活かしきれていないのが勿体なかった。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2019/06/16 12:37

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