満足度★★★★★
鑑賞日2019/05/14 (火) 14:00
座席1階A列4番
フライヤーの力とは不思議なもので、今回の上演を観ようと思ったのは、まずフライヤーの西尾友樹と占部房子の2人の姿だった。もちろん、オフィス・コットーネの安定した高度な舞台に対する信頼もある。
初演は見ておらず、その時点でのオフィス・コットーネ観劇はわずか1回。初演のフライヤーを見返してみたのだけれど、見覚えがある。でも、このフライヤーでは、観劇の与欲求は動かなかったことも覚えている。
しかし、今回のフライヤーには、西尾友樹と占部房子という当代きっての役者の存在感がこれでもか、と出ていて私を離さなかった。そして、それは見事なまでに、私を裏切らなかった。
大竹野正典の存在を知ったのは、昨年の同劇団作「夜、ナク、鳥」のアフタートークにて瀬戸山美咲さんがお話になった時。その前には、温泉ドラゴンで「山の声」を観ており、最近はまたコットーネの「夜を掴む」を観た。ここに書いた3作とも、優れた舞台だと思うが、実のところ、まだ大竹野氏にあまり興味が持てない自分がいた。
そこでだ、この「埒もなく汚れなく」、役者とコットーネという以外、何の思い入れもなく拝見したのだけれど、これが凄い。全編彩る、大竹野夫妻の会話劇、それを適度に緩和するちょっとした笑寸劇。ともすれば息が詰まりそうな場面を確実に魅せる演出の緩急 。バカバカしさも、この舞台の肝なのだと思う。
ラスト近くの松本社長が、大竹野にかける言葉。
これが瀬戸山美咲が、大竹野氏から受け取った言葉なのですね。「埒もなく」という意味。少し深読みしようと思われる方は、パンフレットをお買いになって、大竹野氏の文章を読まれることをお勧めします。舞台後、そして、パンフを読んで、少しですが大竹野氏に関心を持つようになりました。
ちなみに、どこかに書いてあるのかもしれないけれど、大竹野氏はムーンライダースが好きだったのだろうなあ。戯曲に「真夜中の玉子」「Kのトランク」なんてタイトルがあるし。その点では、劇中に流れる「Suzuki白書」からの2曲は、まさに彼の嗜好を反映した適確な選曲づす。