日露演劇交流『幸せはだれのもの』 公演情報 シアターX(カイ)「日露演劇交流『幸せはだれのもの』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     ロシアの学制は、11年制が主流であった。日本流に言えば小・中・高が総ていっしょくたでその後大学入学となるという形である。

    ネタバレBOX

    まあ、10年生から大学に入る人もいるし、現在主流になった10年生迄やった後、大学は行かないが11年生になって更に少し勉強をする人も居る。また大学もかつては5年で終了が一般的であったが、現在はヨーロッパの流れに合わせる形で4年終了の大学が増えている。ブルデンキント中等教育学校は私立の学校だから、授業料は親が払う。全寮制で学生は男女共学である。日本の学制で言えば、中高一貫校に近いか。演劇部の練習日は、クリスマス前の特訓期を除いて週1回、4時間程が当てられている。創立以来20年になるが、プロの役者になった演劇部出身者は3名。無論、なりたがった生徒の数はもっと多いのだが、指導教諭達が止めておいた方が良い、と生徒の両親を含めて説得していることも大きかろう。表現の厳しさや運不運という要素を含めて、生計を立てることが難しい世界であることを良く知る指導者達の親心であろう。
     今日が本番だったのだが、参加した若い演劇部員の中には何人か既に卒業したが、演劇部で演劇活動を続ける先輩数名やプロになったが今回今作に出てくれた先輩女優も1名居た。総じて宇宙という茫漠たる生存条件の中で擬人化された不幸というキャラが狂言回しとなって因果律を奏で、登場人物各々が宇宙の塵を切り出して、或る人間を造形するという作業をしていて実にヴィヴィッドで柔らかい感性とそれらに裏打ちされた役作りをしている点が、各々のキャラクターの存在感に繋がっていた。また、例えば王の金庫番がその被り物・キッパによってユダヤ人と知れるような演出上の配慮も為されている。(ロシア人の通訳に伺ったら、金庫番の話すロシア語はユダヤ訛りなのだそうだ。シオニズムを推し進めた中心人物の殆どがロシア出身のユダヤ人であり、「屋根の上のバイオリン弾き」がロシアでのポグロムを描いた映画であることを見ても、ドストエフスキーが度々ポグロムの悲惨に言及していることを見ても、マルシャークが今作に金庫番としてユダヤ人を登場させていることは興味深い。当然、パレスチナでジャボチンスキーを更に右傾化した思想が、パレスチナ人に対するジェノサイドを恒常的に行っていることに対しても思いが及ぶ。)
     一方、ロシアの民族衣装を纏った民族的な踊りが、ロシアの有名な曲と共に披露されたりする中で、ロシア人気質というのが、あれだけ寒い国だからなのか、思いがけなく明るいという発見もあった。また、茫漠たる宇宙に対し因果律というテーゼを立てることによって人間的尺度を作りだし、宇宙を人間的に解釈しようとする発想は日本人の発想にも近いように思われ親近感を持ったのも事実である。但し、多くの日本人の場合には、この哲理を己を発現させる行為として主体的に担うことはすまいが。
     

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    2019/05/10 02:07

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